丸谷才一とマガジンハウス

 丸谷才一さんの書評集といえば、「遊び時間」というタイトルで大和書房からシリーズ
ででておりました。これは、その後に中公文庫にはいるのですが、そのときに「うなぎと
山芋」なんて名前に改題されたりしています。日本の書評をかえたいというだけあって、
ほんとに長く取り組んでおりまして、大和書房の「遊び時間」は週刊朝日などを舞台に
発表されたものを集めているのですが、当方はずいぶんと楽しませてもらいました。
 発表の舞台が「毎日新聞」になってからのものは、いずれも「マガジンハウス」から
単行本ででているのですが、「木星とシャーベット」95年、「いろんな色のインクで」
05年とでて、今回の「蝶々は誰からの手紙」となっているわけです。
「マガジンハウス」と丸谷才一というとはてなと思いますが、これは大和書房の編集者が
移籍したことによって付き合いがはじまったとか聞いたことがあります。
 このいずれもが和田誠さんの装丁になるものですが、和田誠さんの装丁にはあるこだ
わりがありまして、このシリーズの一作目にある「木星とシャーベット」では、その
こだわりがないがしろにされています。普通でありましたら、クレーム発生でありま
しょうが、これはどのように手打ちとなったのでしょうね。
( クレームではなくて、和田誠さんが了解して、このような処理になったのかもしれ
ませんが。)
 というのは、和田誠さんの装丁における「裏表紙カバー」につくバーコードの処理で
あります。丸谷さんは、和田誠さんを指名して装丁を依頼する。和田さんは、当然の
ごとくバーコードは、帯への表示、または裏表紙に取り外し可能なラベルで貼りこむと
いう手法を指示したと思われますが、一冊目の「木星とシャーベット」にあっては、
バーコードの印刷されて帯を外すと、その下からもカバーに印刷されたバーコードがでて
くるのでした。これはどこかで、連絡のミスがあったのではと勘ぐってしまうのでした。
 このあとの2冊は、そのようなことがありませんので、次回からはそのようなミスは
許されずといわれたのでしょう。
 それにしても、丸谷才一さんの書評集こそ、体裁をととのえてきちんとまとめるところ
はないのでありましょうか。(鶴見俊輔さんにおける「みすず書房」のようにです。)
 ここまできて、代表的な作品をまとめたものが刊行されていない最後の一人ではない
のでしょうか、丸谷さんは。