- 作者: 萩原延壽
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2003/09/11
- メディア: 単行本
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なかにあったものです。
「オーウェルの亡霊」という文章が収録されています。「ジョージ・オーウェル」の
「動物農場」があまりに反ソ的、ないし反スターリン的であると判断され、英ソの友好
関係を維持するために好ましくないという政治理由から次々と刊行を拒絶されて、それは
左翼系であると、保守系であると問わなかったということから、G・オーウェルは次の
ようにいっているのだそうです。
「 本来『真実の固執』を信条とすべき知識人が『政治的な方便』に屈服し、かくして
かけがえのない言論の自由をみずから放棄することである。・・その結果発生するのは、
世論を浸食する『正統病』、とくに1930年代以来、ソ連ないしスターリンのいかな
る行動にたいしてもまったく眼を閉じるか、極度に寛大な反応を示す左翼『正統病』の
成立であり、蔓延である。それが知識人のあいだに一種の『自己検閲』、ことにソ連、
ないしスターリンに関しては、なすべき批判をさしひかえ、なすべき発言を口ごもる、
という態度を生み出すことである。」( G・オーウェル「出版の自由」から)
この「出版の自由」というのは、「動物農場」の序文にするつもりで書かれて、結局は
序文にはならなかったものですが、そのことは結果としてよかったと萩原さんは書いて
います。
「 それをしたのでは、あの風刺小説のもつ普遍的な意味がそこなわれ、全体主義的な
権力、いや、そもそも政治権力にともなう腐敗と堕落という一般的なテーマにかわって、
スターリン体制にたいする攻撃だけが『動物農場』のねらいであるかのようにみなされ、
そしてよまれる危険があるからである。」
政治権力に限らず、会社であっても、集団において権力が集中すると、なぜかそこには
「動物農場」で描かれたような集団の様子を見ることができます。ワンマン経営者という
のは、見事に「動物農場」のトップと同じでありまして、そうしたトップは、自分以外の
だれも信じることがなくなって、血族をその後継に据えなくてはおさまりがつかなく
なるようでした。
まさに、封建主義は親のかたきであるというのは、いまにいたっても、この社会の
どこかでは現実であるのでした。