大きなお世話だ2

 本日も、昨日に引き続きで「がんばれ金井美恵子さん」でありますが、それこそ
「大きなお世話だ」といわれそうであります。
元気がよくって、毒舌のおばさまが、急に弱気になったら、やっぱり心配であり
ますよね。 
 日本文芸社という出版社が、もうすこし文芸出版を続けていたら良かったのにと
思うことです。この会社は、金井美恵子さんの全短編などもでているのですが、
とっくに古本屋でしか入手できないようになっているでしょう。
この会社のもので一番の好みは、金井さんの「本を書く人読まぬ人」1、2であり
ますが、これも書店で簡単には入手できないのでしょう。金井さんの目白連作小説は
河出文庫になって、容易に読むことができるようになったのですが、このような雑文
集も、どこかで文庫にしてくれればいいと思うのでした。
 この「本を書く人読まぬ人」から、四方田犬彦さんについての辛口のコメントです。
「 千六百字のコラムは五十メートルを全力疾走するのに似ていて、コラムとは埋め草
ではなく、雑誌の定期執筆者と定期購読者の暗黙の信頼関係であり、雑誌の顔である、
と四方田は本書の前書きにかいているのだが、『週刊SPA!』の二十六歳見当の若者たちを
『定期購読者』として想定して書かれたコラム群は、正直いって著者の全力疾走(たとえ
五十メートルにせよ)というよりは、スピード感のあまりない生真面目が身上の直球(と、
すこしの変化球)を投げる東京地区大会に出場した進学校の投手という趣で、著者の
本領を充分に発揮しているとは言いがたい。
 本書と同時期に書かれた雑誌や新聞のコラムのあれこれを、当然ながら思いだして
しまうのだが、それらのこらむはどれも読者と筆者の『暗黙の了解』を心地よさそうに
受け入れて、行儀良く小さな枠のなかにおさまっていたし、本書も行儀の良さを崩そうと
するのは、いくつかの瞬間だけである。」
 
 この文章は産経新聞にのせた四方田犬彦「黄犬本」への書評でありますが、黄色本は
扶桑社からでていますので、子会社の本を親会社の書評欄でこきおろすということに
なります。
 この「本を書く人」のあとがきには、「出版業界にも暗黙の了解というか、あるいは
単なる実体に欠けた思いこみにすぎないのかしれないが、ある種の作家の書いた作品の
悪口は『自社作品』であるなしに関係なくある種の「自社発行雑誌」には載せないという
習慣が存在している、と誰でも信じているのである。」