昨日に引き続きで30年前の読書アンケートですが、小生の世代にとっての
文化分野における巨人たちが、まだ健在で、現役でいたのでした。
30年前の巨人たちを、現代に蘇らせたら、どのような人とかぶるのかと
考えてしまいます。
30年前とくらべても、表現の形式が多様になっていますから、昔とくらべて
最近の文化の巨人たちが小さく見えるのは、小生が年をとって、頭が固くなった
からでしょうか。
それにしても、「みすず」192号 76年1月号 26ページに登場する
回答者の顔ぶれとリストされている本のタイトルは、当時25歳の小生に
インパクトがあったなと思うのです。
杉浦明平( 作家)
・ 簡堂遺文 吉川弘文館
・ 永原慶二 日本中世社会構造の研究 岩波書店
・ 石井孝 明治維新の国際的環境 吉川弘文館
・ 比屋根かおる 将軍東京へ帰る 新人物往来社
・ 山川菊栄 覚書 幕末の水戸藩 岩波書店
・ 今井泰子 石川啄木論 要書房
・ 中野重治 わが国わが国びと 筑摩書房
ルネサンスのダビンチの翻訳書を書いている杉浦さんですが、この
すこし前くらいに「渡辺華山」という小説を書いて、そのあと儒学者に
ついての作品を書いていたころでしょうか。「渡辺華山」は、今はなき
朝日ジャーナルに連載し、そのあと単行本(分厚い2冊本)となりましたが
うなりながら読んだ記憶があります。
福原麟太郎( 英文学 )
・ 成田成寿 批評の視点 荒竹出版社
福原麟太郎さんという人のものは、いまは読まれているのでしょうか。
成田さんという人についても知るところがなしですが、一点しかあげずで
コメントは、以下のようです。
「 主として英米文学の新刊に向けた紹介の文章ですが、かねて月々書いて
いたところを見ているところでは何でもない親切な気早な紹介文のようで
あったのが、こうして集めてみると、成田氏の目のもってゆき方も決まって
ぴったり視点にあっており従って、こっちも性根をきめて見てやるぞという
気になる。」
これは、なんとなく、教え子の著作を推薦しているようにもみえるので
すが、どうでしょう。
小林英夫 ( 言語学 )
・ 秋山英夫 思想するニーチェ 人文書院
・ 山室静 アンデルセンの生涯 新潮社
・ 村田数之亮 ギリシャ美術 新潮社
・ 近藤昭 絵画の父プッサン 新潮社
・ K・クラーク ザ・ヌード
ソシュールの翻訳者としても知られる小林英夫のあげているものですが、
見事に多分野にわたっています。
K・クラークについての、コメントは次のようです。
「 とうに我が国に紹介されている本だが、最近原書を入手して読む機会を
えた。このベレンソンの弟子の記述や評価は信頼がおける。記述に対応して
必ず挿絵のあるのも理解を大いに助ける。文章にも一種の風格がある。」