ドロボウ本屋(狸小路)

 本日の話題は、「本の雑誌」12月号からです。
この号で目についたのは、坪内祐三さんのコラムとコメントでした。
件名となっているのは、坪内祐三さんが連載している「読書日記」のなかに
あるくだりです。
 「読書日記」のトップ話題は、植草甚一の展示の際にでた「図録」に
ついてですが、この企画をした学芸員のコメントにかみついているので
あります。「宵越しの金をもたない植草さんの死後、奥さんが生活に困って
作品などを売り、かなり散逸」というくだりですが、この件については、
「植草さんについて知っていることを話そう」(晶文社)でも話題になって
いるようです。それを受けて坪内さんは、「今回の植草展に植草さんの
第一級の資料がもし出品されていないとしたら、それはサッポロ狸小路
ドロボウ本屋のせいなのだ。」と書いています。 
 そういえば、さっぽろすすきの近くの古本や(兼 新刊本屋)でありました
「S美堂書店」の2階には、ある日、突然に植草甚一さんの書斎だかが復元され
たのでした。小生は、あのようなものが趣味でないので、なんと悪趣味なことと
おもったのですが、あのことをさしてどろぼうというのでありますね。
 どうしてあのような展示をする店になったのかと、正統派の古本愛好家で
あった小生は違和感を感じたのです。
 S美堂書店は、いまから40年ほど前は、きびしい親父のいる本屋であり
ましたが、あのとうさんがいなくなってから、いっきに下り坂になって、
植草さんの部屋を再現してまもなくに閉店となりましたものね。
 あの本屋さんは、一階が新刊をならべていて、岩波の本とか、小沢書店の
小沼丹全集」があって、いつも棚をながめていたのでした。
 蔵書一代といいますが、古本やも後継者に人をえることができないと、
ドロボウ本屋呼ばわりされることもあるのでした。
 今月の坪内さん、もう一つは「ベスト3」のリストとコメントでありますが、
坪内さんがあげている3冊のうち一冊が小沢信男さんの「通り過ぎた人々」
みすず書房でありました。小生にとって、小沢信男さんは特別な存在ですから、
この選択に、スタンディングオベーションです。