各社企画物2

広辞苑 第六版 (普通版)

広辞苑 第六版 (普通版)

 この時期に発売の企画物で一番めだっているものの一つは「広辞苑」第六版で
ありましょう。本の形になった辞書は売れなくなっているので、置き場所にも
困ってしまうような大きな本で、新しい版がでるのは、予想外な感じです。
最近、広辞苑で言葉をしらべるひとの大半は電子ファイルを利用しているのでは
ないかと思えてしまいます。そうした電子ファイルを利用しているひとは、広辞苑
本としての厚みや重さをイメージすることができるでしょうか。
 その昔の、父親たちはこどもが進学すると辞書をプレゼントしてくれたものです。
(小生の場合は、小学校の卒業記念が三省堂の国語事典でした。)
大学にはいったときに、「広辞苑」を買うようにと父から金をもらったのですが、
当時、話題になっていた「学研 新世紀大辞典」というのを古本で購入して、残金で
小説本かなにかを購入して、有効に利用したのでした。
 いくらなんでもということで、ずいぶんとあとになって(卒業の前に)、古本やで
広辞苑を購入して、いまもそれが自宅にはあります。小生のところにあるのは、
奥付が69年5月16日第二版第一刷となっていて、その定価は3200円であり
ました。
広辞苑が55年5月に誕生して、十余年で増補改訂され、第二版がでたことに
なります。
 先日に本屋へといきましたら、レジのところに「広辞苑ものがたり」という冊子が
のっていたので、もらってなかをみましたが、これまでの改訂のあゆみがわかるように
なっています。
 83年からコンピュータ組版を導入し、87年からCD−ROM版を刊行したとか、
91年の第四版からは電子辞書にも搭載されたとあります。
電子辞書になってからでも、すでに15年もなっているのでありました。辞書を引く
なんて言葉はそろそろ死語になっているかと思っていたのです。
 本日届きました「図書」12月号は、広辞苑第六版の特集であります。
ドナルド・キーン黒井千次山口二郎堀江敏幸平田オリザなんていう人たちが
特集に文章を寄せています。
 そのなかでは、平田オリザの文章がすこしひねくれてよろしでした。
「 昨今、国語教育で、辞書を引いて付箋をつけるという方法が流行っているらしい。
 学校によっては、辞書引きの速度や付箋数を競わせて、高い学習成果をあげている
 そうだ。おそらく電子辞書に押される一方だった出版社にとっても、この流行は
 僥倖だろう。・・・
  百ます計算や辞書引きだけで人生が乗り切れるなら、それはそれで幸せだろうが、
 人の一生はそう単純なものではないだろう。・・
  辞書を読むのは楽しいものだが、そんなことは大人になってから気がつけばいい。
 辞書を読んで生き生きとしている子どもなんて、気味が悪いではないか。
  編集子からは、広辞苑の宣伝になるような文章を書くようにいわれていたのに、
 いつの間にか辞書の悪口になってしまった。」
 
 付箋をつけるといっても、「新解さん」につけるのと、広辞苑につけるのでは
意味合いが違いそうであります。子どもで「新解さん」は面白いなんていったら、
それはそれで不気味な話です。