二つの時代を生きる2

 「二つの時代を生きる」というのは、昨日に話題とした坪内祐三さんの
「四百字十一枚」みすず書房で取り上げられている小沢信男さんの章で
見られるいいまわしですが、小沢さんたちの世代は、価値観が大きく変化
する時代を生きているのでした。
 それはたぶん小学生のときから、はじまるのでした。小学校が国民学校
なり、戦時体制のなかで、疎開があったり、空襲を経験したり、そして
終戦を経験して、軍国少年は、民主主義の教育をうけるのです。
 小沢さんの旧制中学の同学年に小野二郎さんと、不破哲三なんてひとが
いたのですが、不破さんは、戦中戦後を通じて、ほとんど信じるところが
変わらなかったのではないかと思いますので、二つの時代を生きたとは
いえないでしょうね。
 それでいくと小野二郎さんは、あの時代のとびっきりの秀才が歩んだ
進路でありまして、その振れ幅の大きさが、二つの時代に横たわる溝で
ありましょう。
 小野二郎さんの年譜によりますと、
 昭和17年 12歳 東京府立第六中学校入学
 昭和19年 14歳 海軍兵学校長崎県大村)予科入学
 昭和20年 15歳 敗戦とともに府立六中 に復学
 昭和22年 17歳 東京外事専門学校英米科 入学
 昭和23年 18歳 第一高等学校文化甲類 入学
 昭和25年 20歳 東京大学文科二類 入学
 昭和27年 22歳 東京大学教養学部教養学科に進学
 とあるのでした。   
 
 最近の秀才たちが、ほぼまっすぐに難関大学をめざして、中高一貫
学校へと進学するのとくらべると、なんという道のりでありましょう。
14歳くらいで、鬼畜米英と叫んでいたメンバーが数年後には、占領軍で
あるマッカーサーの圧倒的な力のまえになんにもできずとなるのでした。
 そして、戦後の学制は、それまでの旧制度から、新制度への移行時期に
あたっているせいもあって、最近とくらべるとずいぶんとわかりにくい
ものです。