「きみの鳥はうたえる」

 28日に日曜日に、15分だけといってブックオフに立ち寄りましたら
105円の棚に、「きみの鳥はうたえる佐藤泰志 河出書房新社を見い
だしました。105円の棚は、通常はほかの半額棚にあるものが売れずに
落ちてくるというのが一般的なのですが、状態の悪いものなどがはいって
くると、いきなりこの棚にはいることもあるようです。すくなくとも、
前回に立ち寄ったときには、半額棚で、この本をみかけた記憶はありません。
 最近は、佐藤泰志バブルともいえる状況だそうですから、帯はついては
ないものの、けっこうな美本でありまして、これはせどりの人には
もったいない話であります。おおきな町にあるブックオフには、古本
ハンターが頻回しますので、掘り出し物はあまり期待できないでしょうが、
地方になりますと、ままこのようなものがでてくるのでありました。
 クレインという版元が、「佐藤泰志作品集」を刊行するとい情報がでて
から、古本系のブログでは、佐藤泰志さんの名前をずいぶんと見かける
ようになりました。亡くなって17年とあります。小生よりも学年で一年
上になるのでしょうか。学生のころから、文学賞などに応募していて、
純文学一筋であったようです。この「きみの鳥はうたえる」は2作品を
おさめていますが、刊行は82年とありまして、まだ存命中でありました。
 芥川賞の候補に5回なったとありますから、常連の一人でしたが、運が
なくて受賞にはいたらなかったのでしょう。それなりに実力はあった
はずですが、あの時代は、いまよりもずっと新人作家の層が厚かったです
からね。それに中堅からベテランの作家の層はもっと厚かったので、よほど
斬新で、抜きんでた実力がなくては、日の目をみることはなかったのでは
ないでしょうか。
 小生にすれば、じぶんより年長の作家のものに眼がいっていましたので、
同世代の作品には、ほとんど関心がむかなかったのかもしれません。
佐藤泰志さんが自死したニュースは眼にしたことがありまして、志なかばに
して死を選んだかと思った記憶は残っています。
 佐藤さんのこの本の巻末には、河出の広告がのっているのですが、ここに
ある刊行本リストには、つぎのようなものがのっているのでした。
 ・ ストレイ・シープ     中平まみ
 ・ なんとなく・クリスタル  田中康夫
 ・ 囚人のうた        青山健司
 ・ 百色メガネ        ふくださち
 ・ みのむし         山本三鈴
 ・ アイコ16歳       堀田あけみ
 ・ コーマルタン界隈     山田稔
 いまも支持されている作家というのは、山田稔さんでありますが、若い
作家の数人は、いまはほとんど名前を聞くことがないようです。