雑誌「世代」派

 「世代」というのは、戦後間もない46年7月創刊され、52年12月に17号で
終えた同人誌であります。

「 この青年たちは戦場を知らず、軍隊生活の不合理だけを知り、中国人を殺した
経験をもたず、自分たちが殺される期待の経験だけをもっていた。未来のために
生きたことがなく、今や未来をみずから決定する必要を感じていたのである。
 青年たちは、再び、占領下の東京に集まって、同人誌『世代』をつくった。
そのなかには、後に経済学者となった日高普や、宮沢賢治について画期的な本を
書いた詩人中村稔も混じっていた。私は、二人の小説家、福永武彦中村真一郎
共に後に三人の共著『1946年文学的考察』として刊行したいくつかの文章を
『世代』に連載した。」 加藤周一 「羊の歌」から

 「世代」は、全寮制であった旧制一高から生まれました。運営の中心になった人は
加藤周一さんたちよりも、すこし下の人たちでありました。この『世代』は、最初は
目黒書店というところからでていたのですが(目黒書店は、高杉一郎さんのベスト
セラー「極光のかげに」をだしたことで有名です。)、後半は、書肆ユリイカから
の刊行となっていました。「詩人たちーユリイカ抄」の後ろにおかれている「同人
雑誌目録」の解説には、以下のようにあります。

「 創刊時は、遠藤麟一朗を編集長に、いいだ・もも、矢牧一宏、浜田新一(これは
 日高普さんの筆名)、有田潤等を中心に編集され、加藤周一中村真一郎
 福永武彦による CAMERA EYES( 後に『1946年文学的考察』は注目された。)
 以降、中村稔、吉行淳之介小川徹村松剛、八木柊一郎、橋本一明、清岡卓行
 栗田勇等が加わる。同人およびその数は明確ではなく、多数が離合集散」

 年長であった加藤周一ですら、27歳くらいでありますから、本当に秀才たちの
同人誌という感じで、さぞかし鼻っ柱が強かったのでありましょう。これからの
日本の文学界をしょってたつというくらいの気概をもってやっていたことと想像を
しています。
 もちろん、このグループには努力型の非秀才の居場所はなく、これら綺羅星
メンバーたちが話題を独占するので、非秀才の人々は第三の新人として世に出るまで、
「世代」派のひとびとが派手な活躍をするのを指をくわえてみているしかなかった
のでありましょう。