面倒見のいい人

 日高普さんの「本をまくらに本の夢を」をぱらぱらとみていましたら、次の
ようなところがありました。もともとは「岸田國士」さんとのことを記した
なかで見いだしたものです。

「 もともと岸田國士が好きだった。劇作家としても長編小説の作家としても
好きだった。だから北軽井沢で米川正夫氏夫人が岸田家を訪問する際につれて
いってもらったのだ。米川夫人とは戦後の療養なかまで、そのごひとかたならぬ
世話になっている。北軽井沢の岸田山荘では福田恒存氏や三島由紀夫氏と同席
したこともある。」

 米川正夫さんとは、ロシア文学者であります。その昔は、いまよりもずっと
ロシア文学が読まれていましたので、人もお金も情報も米川さんのところには
集まったのでありましょう。米川さんのところに人が集まったのには、この
夫人の役割も大きかったように思います。ずいぶんと面倒見がよろしい方の
ように思いますが、ほかのところにも、この夫人についての記述があるのでした。

「 雑誌ユリイカ創刊当時から、財政的には常にぎりぎりの状態だった伊達得夫
 援助し、ユリイカ新人賞の設置などを可能にさせた人に、米川丹佳子夫人(故
 米川正夫氏夫人)がいる。本文にでてくる橋本一明が米川家と親しかったことが
 機縁になったのだろうと想像するが、米川夫人は書肆ユリイカのいわば影の有力な
 協力者だった。」 ( 「詩人たちーユリイカ抄」の大岡信の解説から)

 若い文学者たちにとって、このようなスポンサーが存在するというのは、たいへん
ありがたいことでありまして、最近もこのような役割を果たしている守り神の
ような女性はいるのでありましょうか。(ネットで米川さんを検索してみましたら
米川サロンというのがでてきました。米川サロンというのが戦後文学にはたした
役割をだれか書いているのでしょうか。)