創業40周年 11

 国書刊行会の「ラテンアメリカ文学叢書」内容見本にいくまえに、その時代の雰囲気
などを、当時の雑誌でみています。ボルヘスを取り上げそうな文芸誌は「海」くらい
しか思いつかないのでありますが、「海」のラテンアメリカ文学文学特集は記憶に
残っておりません。
 特集を組んでいる雑誌の、もう一つは次のものとなります。

 これは「ユリイカ」1979年7月号であります。
 表紙には「特集 ラテンアメリカの作家たち」とあり、それの<現代文学の最前線>
と添えられています。
 これに寄稿している方は、筒井康隆辻邦生、大沢正佳、木村栄一、浜田滋郎、岡庭昇
という方々で、鼓直さんはマルケスの作品を翻訳し、小説略年表を作成しています。
「カイエ」は「ボルヘス」に焦点が絞られていたのですが、それから1年が経過して
やっと他の作家たちに光があたるような特集になっています。この「ユリイカ」の表紙に
掲載されているラテンアメリカの作家は、カルペンティエールマルケスコルタサル
ジョサ、インファンテ、プイグ、パスという面々です。
 「カイエ」はとにかくラテンアメリカ文学特集を、他よりも早くにやりたいと思ったの
でしょうが、その時には、ほとんど翻訳されていなくて、他の作家には言及することが
できなかったのでしょう。
 「ユリイカ」特集についている「ラテンアメリカ小説略年表」をみても、「国書刊行
会」の「叢書」収載のものが半数以上をしめています。
( 集英社からでた「世界の文学」にも何作か入っていたのを思いだしました。これは
78年から79年にかけてのものでありました。)
 明治の日本文学は、露西亜の小説に学んだといわれ、20世紀後半の日本文学は、
ラテンアメリカ文学に大きな刺激を受けたといわれるのですが、これは1970年代中頃の
話となります。