金曜日はブックオフへ

 ひさしぶりに仕事帰りにブックオフへと立ち寄りました。小生の住むまちには
ブックオフ一軒とリサイクル系の本屋が数軒ありますが、定期的に巡回している
のは、ブックオフのみであります。数週間、とりこみが続いていたせいもあって
ブックオフにもごぶさたをしていました。
 本日は百五円本に二冊の収穫でありました。両方の定価をあわせると4650円
となりますが、これが210円で買えるのですから、いったい定価の何割なので
しょうか。これは間違ってはいないかと本を書いた人、つくった人が気の毒に
なってしまうのでした。
 その一冊は 久世光彦「怖い絵」文芸春秋刊です。91年のものですが、小生は
これの文庫をブックオフで購入していましたが、元版を手にしたのは初めてで、
けっこうこったつくりのものです。各編ごとにカラーの口絵がはいっているのは、
文庫版と同じですが、絵のサイズが違いますので、こちらのほうがぐっと見栄えが
します。
 この「怖い絵」には帯がついておりまして、それには本文からひかれた次の文が
ありです。
「 たとえば、食卓のある部屋の壁にクロード・モネの睡蓮の絵が架けられた家庭に
幼児をすごした子がいるとする。一方、親が何気なくギュスターブ・モロー
サロメの絵を飾った部屋で三度の食事をして育った子がいたとして、この二人の子の
それからの日々を思うと、何年もの間、日常の視界の中にあったそれぞれの絵は
きっと二人の人生になにかの関わりを持っていたのだろうし、長じたときの
二つの心の距離は考えもおよばないくらい遠くはなれているのではないかと思うので
ある。それほどに一枚の絵は怖い。」

 もう一冊は佐多稲子「思うどち」講談社 89年刊です。佐多稲子さんの本と
いうと地味な装丁のものを思い浮かべますが、これは芦川保さんの絵を、中島
かほるさんがデザインをして、とてもしゃれています。このほんが世に出たときに
手にしているはずですが、まったく記憶に残っていないものです。
 この本のなかで一番ページを費やしているのは、「ふみんと私」という文章で
ありますが、佐多稲子が不眠に悩んでいて、それとのつき合いかたを文章にした
のだなとおもっていましたが、これは「婦人民主クラブ」の略称で「ふみん」の
ことでありました。
「 神田の共立講堂で開かれた婦人の集会は会場ぎっしりの盛会であった。あの
 ときの感動を今も覚えている。戦争中を耐えた婦人たちが、今この集会に
 こんなにも集まっている、とおもうことは、感動的であった。このとき婦人の
 民主化を求める大衆団体を、とよびかけたのだったとおもう。婦人民主クラブの
 発会式は芝の赤十字の会館でもたれた。綱領は私が原案を書き、宮本百合子
『日本の輝かしき民主化の達成のために進む』という鮮やかな結びの主張を書き
 加えた。」
  
 どちらもなかなか中身がこさそうでありますこと。