「本をまくらに本の夢」というのは、経済学者であった日高普さんの
書評を集めた本のタイトルであります。「本をまくらに」というのは、
奥本大三郎さんの著書のタイトルでもありますが、ねころんで本を読んで
いるうちにいつのまにか、うとうとと居眠りをしているというのが、
読書人にとってのパラダイスでしょうか。
そういえば、長谷川四郎さん「本よむ人の歌」という詩がありますが、
これには次のようなフレーズがあります。
「 風にページをめくらせ
海をみている
本よむ人
・・・
鼠にページかじらせて
夢みている
本よむ人
聞えてくる
カニのよこばい
睡眠時間
ZZZ
GGG
PPP 」
ということで、長谷川四郎さんの本よむ人のイメージもやはり居眠り男で
あったのでした。
日高普さんは、若い時代に「同人誌」で読書エッセイなどを連載しており
まして、その時代のものは、創樹社から「精神の風通しのために」で一冊に
なっています。これは、とってもすばらしいものですが、あまり評判になって
いないのが残念です。
本日に話題とする「本をまくらに・・」は、96年に社会思想社からでた
ものでありますが、その本の冒頭には「はしがき風に」ということで、次の
文章がおかれています。
「インターネットのためにやがて本が駆逐されるだろうという説があるが、
コンピュータがまくらになるだろうか。本はそのために作られたものでない
からまくらに適したものではとはいえ、寝ころんで本を読んでいて眠く
なったときまくらにあたるものをそばに求めるとしたら本しかないではないか。
そのとき本は立派にまくらの役を果たすのである。風邪をひかないためには
あたたかい時がいいし、できればすべてがものいいし、できれば、すべてが
もの憂いような晩春がいい。その晩春のひとときに陶然たる夢をむすぶことが
できるのも、本のおかげであろう。
インターネットに比べて断然本を支持するゆえんである。」
この書評集で、どのような本を取り上げているかは、また明日にでも。