昔京一、今恵文社

 旅の宿からと気取って書いていますが、なんのことはなしで京都に来て
いるのでありました。これまでの数日は、日頃よく足をはこぶところ
ばかりでしたが、本日は、はじめての店へといきました。
 恵文社一乗寺店というのが評判と聞いて、京都滞在中に一度いってみたいと
思ったのです。夕方になってから、京阪と叡電を乗り継いで一乗寺へと
いきました。
 小生は、いまから35年もまえに京都で学生生活をおくり、下宿(ここは
食事なしで、6畳一間で月額6千円くらい)でありました。その下宿は、数年
前に訪ねましたら、すっかり壊されていて、そのあとは駐車場に改装されて
いました。大家さんも一緒に住んでいたのですが、どこに引っ越したので
ありましょうか。
 小生が利用していた駅は、叡電(もちろん、当時は京福電鉄でした。)の
修学院でありまして、すまいは松ヶ崎でした。
一乗寺というと、なんといっても「京一会館」という映画館でありまして
土曜のオールナイト4本立てなんていうプログラムがあったのでした。
(あったはずです。3本までは間違いがない。)
もともとは映画全盛期ころにできた映画館でありますから、近間のひとを
相手に3番館くらいであったのでしょう。いかにも場末の劇場という
感じでした。(最近は、京一会館についてのホームページもあるくらい。)
一度、ホームページにあった場所を確認してみたのですが、どうしても
その場所が思い出せないのでした。映画を見にいくときは、修学院駅をでた
なかどおりを一乗寺駅にむかって下がっていったのでした。時代は70年から
の4年間でありまして、世間の大学生は、学園闘争に敗北して、挫折感を
味わっていたので、東映やくざ映画が受けていたのです。
 そして、最近、わざわざ一乗寺に足を運ぶのは、「恵文社」のためです。
もちろん、そのむかしは、このような本屋はなかったのであります。
いつの間に、このようなおしゃれな本屋ができたのか。女性むけの本が
充実しているのは、おとこのおばさんといわれる小生このみであります。
 ここは、なるほどの品揃えでありまして、感心をばいたしました。
 とくにぎょっと思ったのは、「ヴァルボアまで」という雪華社という
ところからでた岩崎力の本でありあました。小生は、どこかでぞっき扱いと
なっていることで購入したのですが、いまも、この本が新刊で入手できると
思わなかった。ジュンク堂あたりでみたら、このように感激はしない
ものですが、やっぱしコンパクトな店ですから、棚をつくる人のセンスで
ありましょう。
 ここでは、田中栞さんの「書肆ユリイカ」についての冊子を購入しました。
このような冊子が、買えるのはそんなにはありませんぞ。不思議な限定番号が
はいっていました。
 次ぎに、この本屋にくるのは、いつのことになるでしょう。