醒めて見る夢 大庭みな子

 先日の小旅行で訪れた町にあるブックオフで「醒めて見る夢」大庭みな子著を
百円棚で見つけました。大庭さんは、瀬戸内寂聴さんとは違った魅力のある人で
あったでしょうから、男性作家の目にはどのようにうつったのでしょうか。
 この本にも、男性作家について記している文章が何本がありますが、こうした
作家とはどのようなおつき合いであったのでしょうか。
なんとなく、小島信夫さんとはそうとうに親しかったようにも思えますし、
藤枝静男さんとはどのようなおつきあいであったのでしょう。花田清輝さんに
ついての文章もありました。
 たとえば、花田清輝さんについての書き出しは、次のようです。
「花田さんがもういらっしゃらなく、実に、実に寂しい。日が経つにつれてその
想いがつのる。たくさんのことを教えていただきながら、愉しい語らいのできる
数少ない方であった。もっともっと強欲につきまとい、知恵を授けていただかった
ことを悔いている。」
 そして、この文章のおしまいは、
「彼ほどの人を育て、これほどの仕事を指せた夫人に、こころからの深い敬意と
賛辞を捧げる。」となっていました。

 小島信夫さんについてはつぎのように書き出されます。
「 小島信夫さんは、お話をしていて気持のよいかたである。
  正直でてらいのない、きばらない言葉のたのしみを話相手に与えてくれる、
 数少ない人である。彼は、正直なことを述べて、相手の気を悪くしない独特の
 才能がある。きっと、非常に豊かな感受性がその批評精神を支えているので、
 いわれた当人も、そばで聞いている第三者も、それは真実であると納得を
 するのだろう。」
 
 男性作家について評を書いて、それを読んだ作家夫人が、心穏やかでいられると
したらいいのですが、どうしてこのような評になるのよ、なにかへんなことに
なっているのではないのとなったら、たいへんでありまして、女性作家で魅力が
あったりしますと、男性作家の家庭に騒動をもたらすことになりかねません。