署名本と献呈本 3

服部滋」とは、なにものぞというのは07年5月の状況でありました。
フリーの編集者をなさっていて、bk1に書評等を発表している方であろうとはわかった
のですが、どのような仕事を、現在なさっているのかは、見えてきませんでした。
 それからほぼ半年たって、新しい天体のごとくに「ウェッジ文庫」が創刊となって、
これは渋い本を愛好する人たちのブログで大変な話題となったのですが、その編集部
服部滋さんはいたのであります。
 当方は、ウェッジ文庫の後書きをみて、編者がウェッジ編集部の服部さんに世話に
なったという感謝の言葉から、ここにいるとわかったものか、それとも小沢信男さん
に教えていただいたものか、これが判然といたしません。
 どうやら、これは後者のようでありまして、地味な本の企画をしていた編集部が、
その本の解説を小沢信男さんに依頼するということで連絡をした時に、小沢さんが、
花田清輝さんに献呈した「わが忘れなば」を入手したのは、私でという話しになった
ようであります。
 狭い地味本の世界でありますからして、このようなことがあってもいっこうに
不思議ではありませんが、この一連のことを記したのが、今回の小沢さんによる
週刊朝日「忘れられない一冊」の「傍線の値段」であります。
「問題の書き込みが読みたさに財布をはたいて、いざ手にして見れば、それは傍線
のみであったという。傍線に茫然としたかもしれないその人は、かの奇書揃いの
ウェッジ文庫の編集人、服部滋氏でありました。」
 この週刊朝日に先だって、2010年2月に刊行された「SUMUS」13号「まるごと一冊
晶文社特集」にある「あなたの好きな、思い出に残る晶文社の本を教えて下さい」と
いうアンケートに答えて服部滋さんは、小沢信男さんの「わが忘れなば」をあげて
いらしゃいます。服部さんが、この本をあげている理由は「SUMUS」特集をご覧下さい
ですが、この文章と小沢さんの文章は見事に照応するのであります。
 服部さんは、小沢信男さんが花田清輝さんに献呈した「わが忘れなば」に続いて、
小沢さんが花田さんの没後に、花田夫人に献呈した詩集「赤面申告」(朔人社刊)も
入手されたと、拙ブログコメント欄に書き込んでいただきました。これもあわせて
ご覧いただければ幸いです。(あえて、コメントの日付は記さないことにしましょう。)