「幻戯書房」創立5周年

 本日の朝日新聞朝刊に「おかげさまで、創立5周年」ということばとともに
幻戯書房」の広告がでておりました。角川につながる辺見じゅんさんが創立した
会社であるように記憶をしておりますが、この業界で5年もつというのは立派な
ことです。
 フリーとなった編集者のすぐれた企画を形にする出版社であるという趣ですが、
創立初期に企画をたてたのは、小尾俊人さんであったようです。最初の出版物から
して小尾さんの「本は生まれる、そしてそれから」であったように思います。
一番、話題になったのは小尾さんがまとめた「鴎外の遺産」全3巻でしょうが、
これは、一冊が28000円というような値段でありますから、普通の読書人には
手が出ないものです。みすずの編集長として、みずからも現代史資料の「ゾルゲ」に
ついてまとめた小尾さんでありますから、「鴎外の遺産」をまとめる編集者としては
これ以上の人はいなかったでありましょう。
 「幻戯書房」の本は、何冊か購入しているはずと思って、この広告をながめるので
ありますが、「本は生まれる、そして、それから」だけしか購入していないので
しょうか。
 先日に大きな書店へといったときに、小尾さんの「出版と社会」という新著を
立ち見しましたが、これがほとんど1万円の単行本でありました。ずいぶんと
ゆったりした文字組みのもので、昭和出版史と宣伝文句にありますが、これはちょっと
高すぎることです。
 最近は、南陀楼綾繁こと河上進さんが編集者として加わって、「阿佐ヶ谷会 文学
アルバム」なんて新刊がでて、話題となっています。
社員としての編集者が企画をだして本をだしていくというのとはちょっと違った成り
立ちの出版社ですが、会社としての路線みたいなものをさだめていくのがすこし
たいへんそうであります。