最近に新潮文庫にはいった辻原登「枯葉の中の青い炎」の帯には、第31回
川端康成賞受賞作とありました。もともとは、川端康成のノーベル文学賞賞金を
もとにして作られたようでありますが、その一回目は上林暁「ブロンズの首」で
候補となった作品は佐多稲子、庄野潤三、小島信夫、三浦哲郎、八木義徳、
安岡章太郎という面々です。(1974年のこと)
一番の若手は三浦哲郎でしょうか。それにしてもそうそうたる候補者たちであり
まして、このなかから作品を選ぶというのは、高度に政治的な判断がいるようです。
初期のころとくらべると、最近は作家が小粒になっているように思います。
それでも、短編小説好きは、この文学賞のノミネート作品とその作家に注目を
せざるをえません。
ちなみに辻原が受賞した05年に最終候補作となったのは、金井美恵子、山田詠美
清水博子、小川洋子、小野正嗣、稲葉真弓、角田光代というひとたちでした。
最近は、むかしとくらべると「新潮」に掲載された作品の受賞比率があがっている
ようです。
とはいうものの、この「枯葉の中の青い炎」は楽しみました。ずいぶんと贅沢な
しかけがもりこんであって、しかもそれが文庫にしても50ページくらいでまとめ
られているのですから感服しました。いまころになにをいうのであるかといわれ
そうでありますが、「村の名前」で芥川賞をうけた辻原さんは、このくらいの
長さの作品が一番うまいのではないでしょうか。
短編小説だけでは生活はなりたたないでしょうが。