小生と同じ年齢の本

 小生と同じ昭和26年に誕生した(または刊行された)本には、どのような
ものがあるでしょうか。
 たまたま、自宅で昨日に手にした河出書房 市民文庫「ある晴れた日に」
加藤周一著)は、そうした一冊でありました。当時の定価は90円となって
いますが、これはけっこう高い値段であるように思います。保存状態が
よろしくないせいもあって、ずたずたになっていますし、ほとんどページが
やけて茶色になってしまっています。
 この文庫をどうして入手したのか、たぶん自分で見つけたのではなくて、
友人にプレゼントをしてもらったものであるはずです。河出には別な文庫も
あったのですが、河出市民文庫というのには、どのようなものがはいって
いたのでしょうね。(この文庫のうしろには2ページにわたってリストが
のっていますが、加藤周一中村真一郎などは、最も若手であったことが
わかります。)
 古い本を手にしたときの楽しみは、この本に残されている元の持ち主の
足跡であります。書き込みがあるとか、レシートがはさまっているとか、
しおりかわりに映画のチケットでもはいっていれば最高であります。
 今回の「ある晴れた日に」は、あちこちに紙片がはさまっていて、
そのページにはかぎかっこなどがつけられていたのでした。たとえば、
次のようなくだりにありです。

「 太郎は子どもの時から東京山の手で育ち、軽い含み声で呼ぶ『御免
下さい。』のやわらかい響きをしっていた。その微妙な語調は、戦前に
東京の中産階級にあったある程度の礼節というか、控えめな態度の忠実な
表現」 
 
 ちなみに、これに挟み込まれた紙片には、「DENTSU ADVFRTISNG・・」と
いう印刷の文字をみることができます。これは持ち主の勤務さきに関係が
あるものでしょうか。このローマ字表記のしたには、「NIPPON DENPO
TSUSHINSHAとありまして、これが「電通」の正式表記であったので
しょうか。
 それにしても、いろいろと想像をさせてくれる文庫本であることです。