生まれた頃にでた本

 知人に子どもが生まれたりしたときに、子どもの誕生日と発行年月日が
近い本をプレゼントに贈ったことがありました。本来でありましたら、
お祝いでありますからして、なにかおめでたいものとなるのですが、
誕生日にちかいものから選ぶので、選択のはばがせまくって、苦笑いする
ようなものをおくることになったりもします。したがって、これは親しくて
しゃれを理解してくれるひとにしかできないと思われます。
 これまでで記憶にのこっているのは、後輩の息子が生まれたときに贈った
ものですが、赤瀬川原平トマソン」がありました。いまはちくま文庫でも
みることができるのですが、もとは白夜書房であったはずです。写真時代に
連載されたときに話題となって、写真時代ではそのページだけを立ち見して
いました。(これはほとんどうそです。)
一冊にまとまったのを機に購入したのですが、後輩の息子への贈り物として
なにがよかろうかと「トマソン」を選択したのです。「トマソン」というのは、
もちろん、そのむかしに読売巨人軍に在籍していた助っ人外人の名前から
とられておりまして、存在はするものの役に立たないもののまたは、もとは
役割があって存在したのが、役割を失ってもなお存在する純粋オブジェの
ことをいいます。
 いしいひさいち流にいうと、おおがた扇風機となりますが、廃業し建物
本体がなくなった後も、解体されずに残っていた風呂やの煙突が「トマソン」の
代表的な存在といわれています。
 「トマソン」のように生きることを望んで、子ども誕生祝いに贈ったわけでは
ありませんが、あれから20年ほどもたって、こどもはちゃんとした青年に
なっているようで、すこしはほっとしているのです。
 ちなみに小生と同じ頃に、この世に出た本には河出書房市民文庫版の
「ある晴れた日に」があります。(発行は昭和26年7月30日で、小生は
生後5ヶ月)
まだ紙質がよくないころでありまして、いまはぼろぼろとなっていますが、
この本を手にしますと、当時の時代背景を推測することができます。
小生も、このくらいくたびれているのでしょうか。