新潮社「波」7月号

 昨年1月に亡くなった父宛の郵便物は、さすがに届かなくなりましたが、
新潮社「波」だけは、毎月律儀に届くのありました。以前は、「図書」とか
「ちくま」なども購読していたのですが、更新の手続きを忘れたようで、
いつの間にかこなくなっている、不思議だといっていました。それらは
小生が購読しているので、こちらに届きましたら、回していたのですが、
「波」は、小生がとっていないせいもあって反対に見せてもらっていたの
でした。
 7月号は、これまでのところ「一冊の本」「図書」と届いたのですが、
これがいまひとつ「これだ」と思うようなものがなくて、このブログで
とりあげることはなしですが、いつもはぱっとしない「波」が今月は
よろしです。
 冒頭は「先生とわたし」刊行記念対談です。四方田犬彦巽孝之が対談を
しています。この「先生とわたし」は雑誌掲載時に話題となりましたし、
このブログでもとりあげましたので、この対談については、四方田の
次の発言を紹介するにとどめましょう。
「 福沢諭吉が『藩閥政治は親の仇でござる』と言ったけど、私は
『学閥政治は師匠の仇でござる』と言っておきたかった。
一方、西脇順三郎の名前も知らない東大の先生がいて、由良君美は憤懣
やるかたなかったわけです。」

 今月の「波」では、新しく連載がスタートしました。「古本つれづれ草」
というコミックです。これまでも出版社のPR誌にコミック仕立てのものは
ありましたが、新潮社「波」というところではじまるのが新鮮であります。
しかも、最近はやりの「古本」ものでありますからね。「ちくま」では
女性経営者の古書店めぐりを岡崎武志さんが連載していますが、最近は
そんなに古本のことがはやりなのでしょうかね。( 本屋のコミックスの
ところをちらっとみましたら、古本ものがありまして、こういうことに
なっているのかと驚いたのは、本日の午後のことでした。)

「波」の「古本つれづれ草」は池谷伊佐夫さんというかたがかいているの
ですが、その第一回は「横光左馬の原稿」というもので、登場する古書店
神戸「黒田書店」となっています。「このたび店を閉めることにいたし
ました。」というたよりが、黒田書店より届くところからはじまって、
その店とご主人の回顧になるのです。これは神戸「黒木書店」のことで
ありましょう。最初のところで、「河童がのぞいた」シリーズのように
俯瞰の店内図がのっていますが、これは、小生の記憶に残っている黒木
書店の内部であります。いまから30年も昔に数回いっただけですが、
そんなに大きくない店に、ずいぶんと充実した品揃えでありました。
出張かで神戸へといったときに、都合をつけて黒木書店を訪ねたことが
ありますが、そのときに父への土産用に土屋文明先生の歌集「山下水」を
購入したことがありました。
 これもなにかの縁でありますので、このあともしばらくは父の名前で
「波」の購読更新をすることにいたしましょうぞ。