新劇評判記

 最近はほとんど新劇ということばを聞かなくなったようです。
新劇というのは、むかしからある芝居と区別する意味から使うのですが、
この評判記は、花田清輝武井昭夫が対談形式で行われるのでした。
もともとは61年の刊行本ですから、とりあげられている芝居は、
次のようなものです。
「女は占領されない」「ガラスの動物園」「熱帯酒」など

 この対談のあとがきで花田清輝は、つぎのようにいっています。
「なお、われられのあいだで評判のよかった作品が、きまってマスコミの
せかいでは評判が悪く、不評判だった作品があべこべに、おそろしく評判の
よかったことを一言、つけくわえておこう。
 しかし、われられにとっては、そもそも評判などというものは、問題では
ないのである。むろん、それが、われわれ自身に関する評判の場合でも。」
 この啖呵がいかにも、花田清輝らしいと思ったのであります。