本日の朝日新聞読書欄を見ておりましたら柴田元幸さんが「たいせつな本」に
ついて書いていました。続き物で、前回はまったく記憶に残っていないなと思い
ましたら、前回は「英和辞典」について書いているのでした。
そして今回は、イタロ・カルヴィーノ「見えない都市」についてです。
「 ウソとマコト、在と非在の境目が曖昧な作品に前々から惹かれてきた。
そのなかで一冊あげるなら、やはりイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』か。
カルヴィーノは学生のころ、本書、『宿命の交わる城』『冬の夜ひとりの旅人が』と
次々と訳書がでるのが本当に楽しみだった。
70年代から80年代には世界の新しい小説がたくさん訳されたが、いま思うと、
ガルシアマルケスの『百年の孤独』と、この『見えない都市』が双璧ではないか。
『百年の孤独』は物語の面白さでぐいぐい読者をひっぱり、『見えない都市』は
対照的に、作品世界の淡さ、ゆらぎで読者を魅了する。」
河出とか、白水とか、新潮、集英社などに翻訳小説のシリーズがあって、ずいぶんと
活発に新しいものがでていました。柴田さんが記していますように、70年からは
ずいぶんと翻訳小説で楽しんだものです。そのなかで小生にとっての一番の収穫は、
やはりマルケスの「百年の孤独」でありましょう。これは物語の面白さにおいて別格で
あります。カルヴィーノのものは、白水からでていた「木のぼり男爵」が一番印象に
残っていて、「見えない都市」以降は、ちょっと違うかなという思いを抱いており
ました。これは小生が、ものがたりの筋を追いながら小説を読むからでありまして、
したがってというかヌーボーロマンなどの作品には、まるで弱いのでした。
いまもカルヴィーノの作品は、どこかにあるはずですから、この記事をきっかけに
手にしてみることにいたしましょう。