二列目の人生

 「二列目の人生」というのは池内紀さんの著書のタイトルですが、この本の
紹介には次のようにあります。
「どんな分野にも歴史に埋もれた天才がいる。人を押しのけるのが苦手。あるいは
我が道を貫くため、時流に背を向けることも厭わない。彼らは、華やかな名声と
ともに語られないが、人々の記憶には確かに存在する。」
 池内さんは、このような人として、有名なところでは、モラエス洲之内徹
中尾佐助福田蘭堂なんていう人を取り上げています。ほとんどは未知の人で
ありますから、この人たちに興味がありましたら、この本を購入してよまなくては
いけいのでした。
 本日に手元に届きました「楠ノ木考」の作者である、田所泉さんなども、二列目の
人生というのが一番ぴったりとするのかもしれません。
田所泉さんは、19歳の学生の時にメーデーに参加して起訴され、それ以来法廷
闘争を戦うことになりました。一審の判決がでたのは38歳のときで、実に20年
近い歳月がすぎていました。このときが、被告人であったのですが、一番目立った
時期であります。
 その後はサラリーマンとして働く傍ら、「新日本文学会」の活動を裏でささえ、
最後は、この会を清算するのに力量を発揮したのです。この方については、
小沢信男さんの「通り過ぎる人々」で取り上げていますが、小沢信男さんと
田所泉さんのコンビがなくては、新日本文学会が、無事に解散させることが
できなかったかもしれません。
綺羅星のごとく」の文学者を輩出した「新日本文学会」ではありますが、
その影には、このような「二列目の人」がいたのであります。