ちくま学芸文庫15周年

 ちくま学芸文庫というのは、普通よりも定価が高いいわばプレミアム文庫と
いうものであります。講談社文芸文庫と双璧でありましょうか。講談社にも
学術文庫というものがありますが、こちらのほうは、いまひとつあか抜けない
印象があります。ちくまは学校の教科書などをだしていましたから、学術出版
をもっぱらにするわけではありませんが、すこしはそのような雰囲気があり
ます。それでいくと講談社というのは、あまり知的な印象はありませんよね。
学術文庫とかブルーバックスなんてのをだしているのに、やってもやっても
尊敬されないという感じです。
 本日に届いた「ちくま」6月号は、学芸文庫の特集をしておりました。
小生は、あまり学芸文庫というのは、もっていないように思います。
このシリーズをあまりもっていないことの理由ははっきりとしていまして、
なかなか近所の本屋で入手できないからであります。あとは内容が高級で
ついていけないからでしょうか。
 この学芸文庫がでたのと前後して姿を消したのが、筑摩叢書というシリーズで
ありました。ちくまはもともと文庫をだしていませんでしたので、定期ででる
のはこの叢書だけでした。小生が新刊で購入したほとんど最後の一冊は89年
8月刊の「ヴァルザーの小さな世界」飯吉光夫編訳で、337冊目でした。
この叢書には、いまは学芸文庫にひっこしている「ミメーシス」がはいって
いました。ちくま叢書のラインナップのほうが、ずっとなじみやすいものが
あるように思います。
 リラダンの「残酷物語」とか、トーマスマンの「非政治的人間の考察」なんて
いう、いまもほかでは簡単に読むことができないものがあったのでした。
かっての叢書のなかにあった堅い方のものは、ちくま学芸に流れ、文学的な
ものはちくま文庫にながれていると思いますが、最近のヒットとなった
和算少女」のように柔らかいものをもっと学芸文庫で取り込んでもらいたい
ものです。