車中での読書

 今回の旅行に持参したのは工藤美代子さんの「スパイといわれた外交官」で
ありました。EHノーマンについての評伝ですが、赤狩りの時代に巻き込まれて
自殺をしたカナダの外交官のことを、たいへんわかりやすく書いています。
 飛行機のなか、電車のなかで居眠り半分で読んでいますが、だいぶんと
ページを稼ぎました。工藤美代子さんという作家は50年生まれということで
すが、たいへん力のある作家と思います。
 高校をでてからの経歴がチェコへの留学、カナダ生活というのが、このスケールを
生んでいるのでしょう。ちくまに連載されていた「それにつけても今朝の骨肉」と
いう父親についての作品は、いろんな意味で傑作でありますが、きっとこの父親の
気質を一番継いでいるのは、この美代子さんなのでありましょう。
 それにしても、「田村俊子」「会津八一」「小泉八雲」という作家についての
ものを書くというのは、とっても守備範囲がひろいことです。