戦後の大編集者

 戦後の大編集者と聞いて誰のことを思い浮かべるでしょうか。
なんとなく、大編集者というと文芸関係でありましたら菊池寛
流れのような文壇政治と若い作家たちへのスポンサーといった
イメージをもたれるかもしれません。、
 小生が、これで思い浮かべる人は、1922年生まれで80歳代
半ばとなっている現在も現役の編集者として活動している小尾俊人さんで
あります。みすず書房創立者で編集代表をながくつとめていらした
のですが、現在まで続く白難解 みすずの路線は彼の力によるものです。
ほとんど独力でやったてきたというのが、戦後という時代のせいもあるの
かもしれませんが奇跡のような仕事です。(特には現代史資料)
 一昨年には、「鴎外の遺産」という浩瀚な書を「幻戯書房」から
出版しています。(この版元は、角川源義の娘さんである辺見じゅん
さんです。)
80代になって、このような仕事が可能となるのですから、ほんとに
すごいことであります。
昨年には、三宅徳嘉という言語学者の著作をみすずから編著しています。
この本は344ページで、8900円ほどするようですが、三宅さんの
辞書以外の著作としては、ほとんど唯一のものであるようですから、
関心のある人には、値段なんか問題にならないのでしょう。この本には、
小尾さんの三宅論と著作目録がついていてたいへん有益とのことです。
 小尾さんには、「本が生まれるまで」(築地書館)と
「本は生まれる。そして、それから」(幻戯書房)という2冊の著書が
あります。どちらも声高に語らない、文字通りのスーパー編集者の肉声を
聞くことができます。