篠田一士に導かれて

 阿部良雄さんがなくなりましたが、このような人の
ことを知るにいたったのは篠田一士さんのおかげで
ありました。そのむかしの朝日新聞の文学季評などで
親しんで、すすめる本を手にとっていたのであります。
 おすすめのなかで一番の収穫はなんといっても
百年の孤独」であります。ボルヘスの世界でも早い
時期の紹介者となった篠田さんはラテンアメリカ文学が、
日本文学にも大きな影響を与えるだろうと書かれていました。

 篠田さんとのかかわりもあって、小生にとっての
阿部良雄」さんは、なによりも「西欧との対話」の著者で
ありました。これもいまから35年もむかしの本でありますが、
このなかにある篠田一士にあてられた書簡文のことは、
いまでも忘れることができません。
 ジャンセズニックというフランスの美術学者さんが来日して
日仏会館かで講演会があって、これをのこのこと聞きに
いったのは、この「西欧との対話」の影響でした。
 ボードレールの研究者であることには違いありませんが、
小生としては、どこかにこの本の紹介があってもいいのに
と思うのですが、日本の古本屋にも在庫は見当たりません。
 阿部さんが亡くなったことを契機にして、「西欧との対話」
を手にされる人がいることを祈っております。