好きな出版社

 好きな版元というのは、どこか一本筋が通って
いるところです。
 これまた昔の話ですが、小生が学生の頃には
垂水書房からでた「吉田健一集」というのが、
あちこちの古本屋にぞっき本としてならんでいました。
当時の吉田健一さんは、いまほど評価が高くなくて、
あの時代に作品集をだしたのでありますから、垂水は
よほど吉田健一にほれこんでのことであったでしょう。
 小生が最初に購入した篠田一士さんの本も、この
垂水書房からでた「現代イギリス文学」というもの
でした。この作品は、それから30年ほどたって、
小沢書店から新装版がでました。
 タイトルは、ちょっと大仰ですが、内容は当時の
イギリスの文学作品等を紹介するようなものでした。
篠田さんのあとがきには、クルティウスの「読書
日記」にならったものというようなくだりがあり
ました。
 垂水書房がどのような成り立ちの本屋さんである
のか知りませんが、ここの出版物は再評価されても
よろしいでしょうよ。
 最近で好きな版元といえば、やはり編集工房ノア
ありましょうか。ここは、家族のみでやっていると
聞きますが、川崎彰彦さんのつながりでやはり30年
ほどのひいきにしています。売れない作家 川崎さんは、
「ノアはぼくのホームグランドだから」といっていますが、
在庫をたくさんかかえているだろうと思いますが、
しぶとく出版をつづける社主の姿勢にはあたまが
さがります。
 ここからは不定期に「海鳴り」という冊子がでて
いますが、これには山田稔さんの作品が掲載される
などファンには見逃せないものです。これは定期
購読という制度がないので、どこかのブログで入手した
という記事をみましたら、ノアにはがきを書いて
ご恵贈くださいとお願いをするのでした。
 先年に、小生がはがきをだしましたところ、なんと
うっかりして自分の住所、氏名を書き落としたのでした。
なのに、社主 涸沢さんは保存している読書はがきの
過去分をさがして、それで人物を特定して「海鳴り」を
送ってくれたのです。たいへん恐縮することでしたが、
こうしたことをしてくれるのが編集工房ノアなのです。
 ここは、小沢書店の二の舞にはなってほしくないので
ありました。