あらま気がついたら

 そういえば週末には図書館から借りている本の返却紀元となるのでした。

 今回はまるで成績がよろしくなくて、手にしていないどころか、借りたときに

入れてきた手さげ袋から取り出してもおりませんでした。これはほんといけない

こと、すくなくとも手にとって、パラパラとページをめくり本に風をあててあげ

なくてはです。

 ということで、本日に虫干ししていたのは中央公論新社からでている「百鬼園

先生」となります。 

  講談社、福武からでた先生の全集月報と福武文庫の解説を合わせて一冊とし

たものです。当方が架蔵するのは講談社版全集のみでありまして、ほかでは福武

文庫の何冊かを安価で購入したくらいです。

 したがって、これに収録の文章はほとんど初めて見るものですが、何人かの人

が複数回登場します。あらまたこの人の文章であるかと思っていましたら、巻末

に「執筆者別目次」があって、これがありがたいことです。

 一番多く収録されているのは別格の中村武志さんでありまして、この方だけが

講談社、福武の全集と福武文庫にも書いていました。

この方以外には、すべてに寄稿しているかたはいなくて、目についたのは川村二郎

さんと池内紀さんが各4篇なのですが、どちらもドイツ文学系の方でありまして、

百鬼園先生に親しいものを感じているからでありましょう。

 川村二郎さんは、書くものがなんとなく近づきにくく感じたりしますが、そのな

かでは、百鬼園先生のものは、読み手を緊張させないように思います。

 

 

 

岩波つながりで

 先日から気の向くままに手にしていた小林勇さんの「惜櫟荘主人」をほぼ

読み終えましたので、これに引き続いて岩波つながりということで、高野悦子

さんの文庫本を手にしてます。

 まるで頭からとんでいましたが、高野悦子さんというとお二人いまして、当

方が読もうと思っておりますのは、岩波ホール支配人であった方のほうです。

 岩波ホールですから、高野さんは岩波書店関係者とありまして、小林勇さん

とは縁戚ということになります。(小林勇さんの奥様は岩波茂雄の娘で、

高野さんの姉は、岩波の息子の嫁という関係)

 高野さんの本は、岩波家について書いてあるものではなく、自分の母親につい

て書いたものでありました。

  これを手にしてページをめくりましたら、最初のところに、次のくだりが

ありです。

「(旧満州での)子どもの頃、友達は口をそろえて、日本を代表する山は富士

山だといった。・・しかし、わが家で日本一の山といえば、それは立山のこと

だった。父も母も富山県人だからである。」

 このように書かれていることから、富山への愛に溢れる本ではないかと思う

のであります。

 当方も曽祖父の代に、高野さんの父親が育った富山の下新川郡をあとにして

北海道に移住したこともあって、曽祖父たちは立山を間近に見ながら育ったの

であるなと、その山にとても親しみを感じるのです。(それだけに富山出身の

力士 朝乃山のことは残念です。)

 当方は富山には一度足を運んだだけでありますが、その時には雨模様で立山

を目にすることが出来ずでありました。そのうち、またと思いながらコロナの

ために旅行がままならないことになり、まさかこのまま目にせずに終わったりは

しないでありましょう。

今なら炎上必至であるか

 東京オリンピックは粛々と進行中であるようです。

 当方が最初にオリンピック大会というのを認識したのはローマ大会であり

ますね。そのあとになってから「あの日ローマで眺めた月を」と歌われるこ

とになった大会であります。当方は9歳くらいでありました。

 もちろん東西冷戦の真っ最中でありまして、ソビエト圏の選手はステート

アマなんてことで呼ばれたりしていて、選手のほとんどはアマチュアという

ことになっていました。

 オリンピックを主催団体は元貴族たちが仕切っていたこともあって、選手

は報酬を受け取ることはまかりならぬでありました。今からたった半世紀ほ

ど前はそうでありました。プロの選手がオリンピックに出場可能となったの

はいつからかわかりませんが、大会が金がかかるようになって、スポンサーの

意向を受けてということもあるのでしょう。

 それにしても、その昔にCM契約をしていたかどうかで、オリンピックに

出場することができなくなったカール・シュランツは最近の状況をどう思って

いるでしょうね。

 このオリンピックという大会は、このあとどのように変化していくのであり

ましょう。それにしてもこの枠組を維持しながら大会を継続していくとすれば、

開催地を引き受けるのは中国くらいしかなくなってしまいますね。

そのうちに中国が一番のスポンサーとなって、中国の北京時間にあわせて決勝

などが組まれるということもありそうであります。

 今回は大会開会式の企画に関係しているスタッフの過去の発言などが問題と

なって辞任とか解任となりましたが、これらは発言などがあった時代においても

問題となるものであったと思われます。

 むしろその時代に問題化しなかったことが、その時代の雰囲気を伝えている

ように思います。(いまでも女性差別発言はあまり違和感なく受け入れられて

いますからして。)

 過去に発表された文章を、今の時代に読んでみますと、こんなこと言って大丈

夫かなと思うものがたくさんありますし、現代の感覚からは理解のできないこと

も多いことであります。

 先日に安価で購入し、このところ入厠読書で開いている文庫には、次のような

記述がありましたです。

「学生のころリュックサック一つで二週間あまり、四国を無銭旅行したことが

ある。ひと晩、今治港の待合室で寝た。しらしら明けに起き出して、近くの家の

門口にしゃがみこみ、配達されたばかりの新聞をひらき、配達されたばかりの朝

の牛乳をいただいた。無銭旅行などオコがましい。窃盗旅行というべきである。」

 筆者が学生のころとありますので、1960年代初めの日本の話であります。

筆者は「窃盗旅行というべき」と記していますので、これを良いこととは思って

はいないのでありますが、若い頃の出来心での行動を書き残しています。

 この文章が発表されたのは今から30年ほども昔なのでありましょうが、今で

ありましたら、書き直しを求められるか、そのまま発表したら炎上必至でありま

しょう。

 

いつもと同じ月曜日

 月曜日は朝にパンを仕込んで、発酵時間を利用してトレーニングに行き、食料

の買い出しにいって、夜にパンを焼くという時間割となりです。

 当地は暑いといってもしれていますが(本日の最高気温は24.6度)、それでも

夏のパン作り(自家製天然酵母と道産小麦を使っています。)は、水分の調節が

難しいことです。本日の種も、いつもよりベタついてしまって、成形する時には

手粉を多く必要としました。なかなか奥の深い世界であります。

 このお休み期間でブックオフに足を運びました。文庫ばかりを買ってきたので

すが、そのなかに講談社文芸文庫が一冊ありましたので、予算のワンコインには

収まらずでありました。

 その文芸文庫本は、次のものであるのですが、これが痕跡本でありまして、そ

れを読み解くために購入したのかもしれません。 

 この本の奥付には、下の写真のように数字が振られているのでした。

 1は書名、2は著者名、3は発行日、4は発行所、5は郵便番号で6は発行所

住所、7は電話でここにはない場合も読むと付記されています。8はISBNで

9は定価となっていて、これのしたにはホームページも読むとありました。

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 さて、これはどいいうメッセージなのでしょう。

 これからせどりでもやってみたいという若い人に、ベテランさんが講談社

文芸文庫というのは安くあったら、次のポイントを確認した上で、買うように

ということで、現物にメモ書きで教えた痕跡でしょうか。

 これが記されていたのが吉田健一さんの「旅の時間」というのが、いかにも

でありまして、本文は読まれたような形跡はないのに、奥付にだけはしっかり

と痕跡が残っているというのは、せどりのための実例見本であったのでしょう

か。

片付けをしていたら

 ほとんど床が見えなくなるくらいに物が置かれている部屋を片付けるように

というのが、この連休に当方に課せられた仕事であります。物はダンボールに

入った本とCD、DVDなど、それに切り抜きでもしようかと思っている新聞とか

紙ものとなります。これが何年くらい手がついていないのか、床の上にあるもの

と押し入れにあるものなどをとりあえずまとめてから、物置に移動することに

なりです。

 物置は本を置けるようにと、すこし大きなサイズのものを確保しまして、壁

面には本棚やスチールラックを置いてすこしでも本の背中が見えるようにしま

した。

 その昔からの本と、比較的最近の本を書棚で入れ替えるというのもありなの

ですが、そのためには二軍と三軍の仕分けをしなくてはいけないのですが、その

昔に新刊が出るたびに購入し、さらに文庫になったらそれも買っていたりした

作家さんなどは、最近はすっかり疎遠になっていまして、この人などは戦力外

なのか、それとも三軍に落とすのか難しいことで。(家人に言わせると思い切っ

て処分したらであります。なんにも難しいことないよですね。)

 本日の片付けでいろいろと出てきたものがあるのですが、そのなかで一番は

探していたフロッピーが見つかったことでありますね。昨年にあの原稿が入った

ファイルはどこかにあるだろうかといわれて、あると思うわと答えて探してみ

たのですが、あると思われる場所になくて、どこにしまい込んだものかと思案に

くれておりました。

 そのファイルが、古新聞とかパンフレットとか大判の雑誌などが収納されてい

た箱に印刷した紙と一緒に袋にはいって保存されていました。よかった、これを

捨てたりはしていないとは思ったものの、探しても出てこないとないも同然でし

て、すこしほっとすることで。

 片付けは明日にも続き、読書もオリンピックにも縁がないことであります。

引き続き快調で

 このところ届くのが一番楽しみなのは新潮社「波」であります。毎月のように

これに掲載の文章や「編集後記」から話題をいただいておりますので、ほんと

ありがたいことです。

 編集後記を楽しみにしておりますように、編集長との相性がよろしいようです。

今月の後記では、最近にはまっている川島雄三監督作品へのことから、それに出

演している女優さんに話題が転じています。

「と、右のようなことは実は二の次、川島作品で何より惹かれたのは(『何を今

更』は百も承知!)芦川いずみでした。就中、『風船』で小児麻痺の少女を演じ

る彼女は胸をかきむしられるような可憐さ。」

 結婚を機にすっぱりと芸能界から引退してしまい、その後の写真がほとんどな

い芦川いずみさんであります。当方も小学生の頃に日活の映画で、芦川さんを

見たことがありました。子どもでありましたが、北原三枝さんよりも、芦川さん

のほうがいいなと思ったものです。

 それにしもてほとんど無名と思われた若い役者さんと結婚してどうなるのかと

思ったのですが、その役者さんも見事に大成してめでたしです。

 編集長さんは、「一昨年出た『芦川いずみ 愁いを含んで、ほのかに甘く』も

いそいそ購入。アーウィン・ショー所縁の題も構成も編者の思いが熱い、やっぱ

り女優の写真集はこうでなくちゃあ。」と後記を終えています。 

 こういうのって好きだよなと思っていましたら、「波」の別の場所にも編集長

が登場するところがありです。

 これがまた、先日にも話題とした北村薫さんの「本の小説」という連載ものの

なかにありです。

「前回、小林信彦の小説『悪魔の下回り』について書きました。

 本のことなら、蜂蜜に鼻をひくひくさせ、くまのプーさんのようになる編集長

が、喜んでくれました。あちらは、若い頃からの小林ファンなのです。」

 そうなのか編集長は、小林信彦さんの熱心なファンであるのか。

 この北村さんの今月号は「糸 前篇」となっていて、次号に続くのであります

が、これがまためっぽうに面白い。

 北村さんは、前号に引き続き快調でありますよ。

わかりそうでわからない

 このところ楽しみに見ている番組に「昭和の車といつまでも」というのがあり

ます。30年以上にわたって一台の車に乗っているオーナーさんを探して訪ねると

いうものですが、探し出すまでの過程とその車のオーナーさんに会って、愛車に

ついての話を聞かせてもらうというのが番組の枠組みとなります。(先日に

NHKBSでもパイロット番組で廃番となった車を探し出すという企画を何度か

やってましたが、あれはレギュラーをとれるでしょうかね。横山剣さんと、

スズキさんが出演していたのですが。)

 30年以上にわたって一台の車を乗り続けるというのは、そうした人があまり

いないことでもわかりますように相当に大変なことであります。(これが自転車

でありましたら、まるで珍しくはないのですが)

そのような方々は、車のコレクターであったり、その車に強い思い入れのある人

たちであるのですが、自転車とかを保有し続けるのとくらべると、相応にお金も

かかりますことから、単に情熱だけではできないことです。

 それにしても、これに登場するオーナーさんたちのユニークなことでありまし

て、その人となりを知るだけでも楽しいことです。

 先日の番組ではシトロエン車のオーナーを探して、ほぼシトロエンの修理に特

化した工場を訪ねるのですが、そのときにかってのシトロエンのハイドロという

仕組みの奇妙さについての説明がされていました。

 そういえば、当方が若い頃に、面白がってこの車に乗っていた人がいましたが、

早々に手放したのでありました。

 番組に登場するオーナーさんは、ひどく保有するのが大変なシトロエン車とい

う沼にはまってしまったと語っておりました。ひどく手のかかるものほど保有

るのは楽しいということでしょうか。

 この番組を見ていました、最近に読んだ本にシトロエン車を購入したという話

がでていたなと思い出しました。

 昭和元(1926)年のことであります。

「先生ははじめて自動車を買った。フランスのシトロエンの小型で2700円であっ

た。」

 小林勇さんの「惜櫟荘主人」にありましたので、先生とは岩波茂雄のことに

なります。このくだりを目にして、あれこれと疑問がわくことです。

車はどこが販売(もしくは輸入)していたのか、車の型番はどうなのか、2700円

というのは、他の車とくらべてどうなのかなどなどです。

 このようなことを調べようと思って、すこし検索をかけてみたのですが、これ

がほとんどわからない。

 シトロエンの小型とありましたのは、どうやらB2という車のようであります

が、これはあたっているのかどうかです。