東京JAZZを聞きながら

 本日はほぼ平熱となりましたので、いまだ風邪の症状は残っていますが、

着替えをして、一日を過ごすこととなりました。昨日は横になって本を読み

うとうとすることが多かったのですが、そのたびに奇妙な夢を見て、これが

なかなか面白いものでした。夢は第二の人生であるといった詩人がいたそ

うですが(当方は中村慎一郎の著作に引用されていたのて知りました。)、

なんとなく生活を豊かにしてくれるものが、そこにはあるのかもしれません。

 それはさて、本日はずっと横になることもなしですから、うとうととして夢を

見ることもなしでした。午後からはFMで放送がありました「東京JAZZ」の

コンサートのダイジェストをずっと聞きながら本を読んでおりました。

コンサートでは当方の好きな「The Manhattan Transfer」とか競馬馬では

ないほうの「ブエナビスタ」のOmara Portuondoの歌などを楽しみました。

 読んでいた本は昨日に引き続きで「ニュルンベルグ合流」です。

ニュルンベルク合流:「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源

ニュルンベルク合流:「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源

 

  家族の歴史でもありますが、ポーランド東部の歴史でもあります。本当に大国に

翻弄され続けていることでありまして、ここ二年ほど読んだもののなかにも、歴史家

トニー・ジャットさんがティモシー・スナイダーさんを相手に語った「20世紀を考える。

もそれに関わっていましたし、池内紀さんの「消えた国」もそうでありました。

20世紀を考える

20世紀を考える

 

 

消えた国 追われた人々――東プロシアの旅
 

 当方は未読でありますが、ティモシー・スナイダー さんには「ブラッドランド」と

いうものがありました。

ブラッドランド 上: ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 (単行本)

ブラッドランド 上: ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 (単行本)

 

 

ブラッドランド 下: ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 (単行本)

ブラッドランド 下: ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 (単行本)

 

 本日は 「ニュルンベルグ合流」の400ページくらいまで読み進めることができ

ました。当方としては立派な成績であります。あちこちに横線を引きたいところが

ありますが、図書館本ですので、これはできませぬ。

 これまでで一番印象に残ったのは、著者の母親が幼児の頃に、父はパリに、

母と幼児(著者の母)はウィーンに離れて暮らすことになるのですが、それがどう

したわけか「1939年7月、彼の赤ん坊娘がパリに到着する。」のであります。

母と幼児ではなく、幼児だけが到着する不思議です。これを残された資料から

著者は追跡をして、それを実行してくれた人を探し出します。(その方はなくなって

いたのですが。)

 このくだりを読んで当方は、1974年の映画「ジュリア」のシーンを思いだしまし

た。もちろんヴァネッサ・レッドグレープのほうであります。ジュリアが残した子ども

を探してほしいとジェーン・フォンダ演じるリリアン・ヘルマンに依頼するのですが、

これはリリアンの捜索にもかかわらず見出すことは出来なかったのですね。

 この作品でヴァネッサ・レッドグレープはアカデミー助演女優賞を受けるのです

が、そのスピーチでイスラエルパレスチナの人々への圧制を非難し、大ブーイン

グを受けるのでありました。


Julia Trailer (1977) Jane Fonda Vanessa Redgrave Meryl Streep

 

 

 

 

 

謹賀新年

 病中からではありますが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 薬のおかげで快方にむかっていることを実感することです。昨日よりも

熱がさがっていて、解熱剤を服用すると36度台になることもありですが、

あまり薬に頼ってもいけませんので、ほどほどにしなくては。

 身体が楽になってきたら、すこし本を読んでやりましょうと思いました。

年末年始用にどっと本を借りていますし、そのうえ本も買っているのですか

ら、外出禁止令がでているというのは、おとなしく本を読んでいなさいと

いうことであります。

 読みかけの本をそっちのけにして手にしたのは「ニュルンベルク合流」と

なりです。 

ニュルンベルク合流:「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源

ニュルンベルク合流:「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源

 

  注までいれると600ページを超える大部のもので、評判を眼にしなければ

なかなか手をだしにくいものです。当方は翻訳が出た頃に、書評を眼にしてい

るはずですが、この時はまるで眼に止まらずでした。

 いまだ十分の一くらいしか読んでいないのですが、語らることのない過去と

残されない資料と家族の歴史として読んで興味津々です。

 最初のところを読んでいたら、ヨゼフ・ロートとかシュテファン・ツヴァイク

名前があがっていて、この時代におけるユダヤ系の作家の代表格といえば、

この人たちになるのかと思って、こうした人の文章を読んでもみたくなること

です。

 著者は祖父の足取りを追うのでありますが、出身地のリヴィウという町の

位置づけについて、次のように書いています。

「1914年9月から1944年7月のあいだだけで、この町の支配者は八回変

わった。オーストリア=ハンガリー帝国に属する『ガリツィあ・ロドメリア王国、

クラクフ大公国、アウシュビッツ公国、ザトル公国』をまとめる首都としてしば

しば君臨したあと、この町支配者はオーストリアからロシアへ変わり、また

オーストリアへもどり、その後短期間西ウクライナの一部となり、その後

ポーランド、そしてソ連、次いでドイツ、再びソ連にもどって最後にウクライナ

支配下に入り現在にいたる。」

 30年ほどの間に8回ですから、それこそ昔は良かったという声が聞こえて

きそうであります。昔というのはツヴァイクがいうところの「昨日の世界」であり

ましてハプスブルグ家が支配していたとなります。

 新年ということもあって、この時間はウィーン・フィルのニューイヤー・コンサー

トを見物中でありますが、この楽団自体がオーストリア=ハンガリー帝国の栄華

を今に伝えるものでありますね。

昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー)

昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー)

 

 

本日は当番医へ

 当方は丈夫なほうでありまして、ほとんど医者へとかかることはなしであり

ます。今回ばかりは正月の家族行事があることから、はやく医者にみてもらい

なさいと家人から、矢のような催促です。

 普段でありましても医院は待ちを覚悟でありますが、本日はなおのことです。

年末年始に当番医を訪ねるのは、はるか昔に7ヶ月目にはいった息子が突発

性発疹になった時以来のことです。40年ぶりということになります。

 玄関は靴であふれ、患者さんは椅子が足りないので、あちこちにしゃがみ

こんでいました。ほとんどの人がマスクをしているのですが、ほかの患者さんか

らさらに悪性の風邪をうつされるのを避けるためか、意外に待合の椅子が空い

ても座る人はいなくて、それに乗じて座って持参の文庫本を読んでおりました。

 待ち時間が三時間半くらいでありますので、それなりにページはかせげるの

ですが、やはり頭には入っていきませんです。

蒐集物語 (中公文庫)

蒐集物語 (中公文庫)

 

  検査の結果、インフルエンザA型との診断です。ちょっとくるのが遅かったです

ねとかいわれたりしながら、調剤薬局ではインフル特効薬を服用です。

しばらくは外出を控えてくださいといわれましたが、このような大晦日は経験に

ないことです。

 とりあえず、本日もこのあとは横になってからだを休めることとします。

 皆さん、どうぞ良い年をお迎えください。

39度2分となった

 明日は大晦日であるというのに、風邪のためにダウンであります。

朝の時間は37度くらいでありましたが、そのあと上がる一方でありまして、

いまほどはかったら39度2分となっていました。これはいかんことで、おとな

しくして横になっていますわ。

 

ナマコの眼

 先日に「ヤクザとサカナ」を読んでいましたら、北海道の海岸でのナマコの

密漁に多くのページがさかれていました。当方は、海産物でもナマコは一生

食しなくとも悔いることはないと思う人でありまして、ナマコがえらい高値で

取引されるということ自体が信じられないのであります。

 北海道でのナマコといえば、鶴見良行さんに「ナマコの眼」という本があっ

たことを思い出しました。これは名著という評判でありまして、今では文庫に

もなっているのですが、当方はだいぶん前に、これの元版を安価で入手した

ままで、今の今までページを開いてみることもなしでした。(これのあとがきを

見てみましたら、この「ナマコの眼」のもともとは1986年1月から89年4月ま

で「ちくま」に連載したものであるとのこと。「ちくま」をずっと購読しているの

に、連載中たぶんまったく読んでいないはず)

ナマコの眼

ナマコの眼

 

 これはほんと驚くべき本でありまして、ナマコについての歴史地理が地球

規模で描かれています。

本日は、この本から江戸時代の北海道でのナマコ取引が書かれているとこ

ろをつまみ読みです。江戸時代ですから、ヤクザは登場しませんし、密漁とい

う概念もありません。

 江戸時代の北海道(というか蝦夷地ですね)で漁を担当するのはもっぱら

アイヌの人々でありました。現代のヤクザがひと目を避けてナマコを密漁する

としたら、江戸時代のアイヌの人々は、ナマコをとって商人に売る時にがっちり

と搾取されることになっていました。

 現代のヤクザはぬれ手にナマコとうそぶくのだそうですが、蝦夷地のアイヌ

の人々は、自分たちが生活の場としてきた漁場を追われ、和人が経営する

漁場で働かざるを得なくなります。

 鶴見良行さんは、このように書いています。

「和人の漁業進出は、アイヌ漁民の食糧を奪っただけではない。かれらが重き

をおいていた自然と人間のかかわりに潜む信仰の世界をも破壊した。」

 当方のところは曽祖父の代にひと山あてようとして北海道にわたってきた

のですが、海ではなく内陸部での開墾に従事したとしても、ここでもやはり、

同じようなアイヌの人々との関係があったことでありましょう。

忙中閑あり

 どちらのお宅もお正月の準備で忙しいことでありましょう。

 たいていのお宅は、年賀状を作り、これを投函してからおせち料理

とりかかることになっているようです。この年賀状作りの時に活躍するの

がパソコンでありますが、なかには年に一度年賀状作りにしかパソコンは

使わないという人もいまして、こういう方が、それこそ一年ぶりにパソコン

の電源を入れたら、思うように動かないのでありますね。

 そんなことで知人から声がかかって、応援のためでかけておりました。

当方のパソコンスキルは、決してレベルが高いわけではないのですが、何

せ、困っている人はわらをもつかむでありまして、連絡をいただくことにな

れば、当方も家で片付けや掃除をするよりはパソコンを相手にしていたほう

がよろしということで逃げ出すことになりです。

 それで、こちらのほうは役にたったかといえば、まずまずお役にたったよう

でありまして、これはよかったことです。

 そういえば、本日は外出したおりに本屋とかブックオフへと行こうと思って

いたのでありますが、これは時間が足りずでありました。明日は年内最後の

本屋歩きですね。

 そういえば、あまり相性はよろしくないのですが、「ブルータス」が「危険な

読書」という特集をやっているようです。このような特集は、以前もでていて

買ってなかをのぞいて、ちょっと当方の好みとは違うかなと思いながら、でた

ら買うのでありますよ。

BRUTUS(ブルータス) 2019年 1月15日号 No.884 [危険な読書]

BRUTUS(ブルータス) 2019年 1月15日号 No.884 [危険な読書]

 

 

走って斜め読み

 知人が借りていた本を、また借りして走り読みであります。

 「本の雑誌」2018年度 ノンフィクションベスト10 栗下直也さん選の

堂々一位に輝く次のものであります。

 著者の鈴木さんは、ヤクザ系の業界誌の編集やライターを長らくしていた

人のようでありまして、ヤクザが金を稼ぐための仕事をおっかけているうちに

サカナビジネスの取材にはまったものです。

 ヤクザのサカナビジネスは、基本は違法操業で獲得したものを闇ルートで

販売して利益を得るというものですが、一番わかりやすいのは、とってはいけ

ないものをとって、それをさばく(これが密漁)ことになりです。

 なぜとってはいけないかといえば、漁業権とか漁組というのがあるからで

あって、資源保護の観点から、いろいろな規制も加わるのです。

人気があって市場で高値がつくものは、すべて資源保護のためにがちがちな

たががはまっています。(この時期はとってはいけないとか、とれなくなったら、

何年か禁漁にするとか。)

 最近話題になっているのは、クロマグロでありますが、今年はどういうわけか

北海道の漁業団体が、制限をはるかにこえて収穫してしまって、それがために

他の漁業団体が、とりたくても取れないことになっています。こうして市場に

品物がなくなってしまうと、そこに暗躍するのがヤクザだというのが、この本が

ルポするところです。

 ただクロマグロなどは、そこそこおおがかりな設備が必要で、経費もかかる

ことから、素人ではでがだせませんので、プロの漁師さんなどが違法を承知で

漁をしたりします。これももちろん犯罪となりです。こうしてとったものは、正規

のルートでは流せませんので、闇のブローカーが仲介していくことになりです。

 ヤクザがやるのは、もっと簡単に収穫ができて、リターンの大きいあわびとか

なまことなるのですが、これの手口について、かなり詳細に書いてありますの

で、なかなか参考(?)になることです。

 年末になって高級食材がスーパーにもならぶようになっていますが、サカナ

には基本的に産地証明がつきませんので、それがどのようにして収穫されたも

のであるかわかりません。

 あわびとかなまこの半分近くは密漁品ではないかという説もありです。

このところ北海道は中国系の観光客がどっと来ていますが、その方々が買い求

める土産に海産物があって、そうした店には必ずなまこがあるのですが、これは

どういうルートではいったものなのでしょうね。

 本日の新聞には、日本がIWCを脱退して、商業捕鯨を30年ぶりに再開する

とありました。クジラは、一時期は取ることができなかったので、べらぼうな値段

がついたことがありましたが、最近は人気がなく、価格も低迷しているようです。

こうしたなかで、IWCを脱退してまで商業捕鯨を再開する価値があるのかなと

思いますが、これのしっぺがえしは、クロマグロとかうなぎのほうにきそうであ

ります。