一人出版社かな

 このところずっと出版とか本屋さんという商売は、右肩下がりでありまして、

これに新規で参入するといえば、それはおやめになったほうがいいよといいたく

なることです。

 思いっきり向かい風が吹いている業界ですが、奇特な若い人が、こだわりの

一人出版社を起こしたり、本屋さんを開業したりで、隙間を狙えばなんとかやっ

ていくことができのかもしれません。

 当方と同じくらいの店主がやっていたこだわりの書店は、姿を消しつつある

のですが、若い人たちが始める書店がうまくいってほしいなと切に願うことです。

 当方よりすこし年長の店主が始めた「定有堂書店」は、惜しまれつつ、昨年

閉店したのですが、この店主の影響を受けた人が、新たに書店を始めていると

いうことです。

 「定有堂書店の43年」という副題のついた「町の本屋という物語」を図書館

から借りて読んでおりましたが、これを読んでいましたら、一人出版社のことが

話題となっていました。

 この本に収録されている「『身の丈』の本屋」という章は、まるまる一人出版社

である編書房のウェブサイトに1999年から2000年にかけて連載されていた

ものをまとめたものでありました。

 この章から、編書房に言及しているところを引用です。

「バランス感覚といえば、編書房の國岡克知子さんには『そんなに気配りしてて、

大変ね』と気遣っていただいたことがある。

 國岡さんの仕事の立脚点は『独立自営』。私は身の丈をたつきとする町の本屋。

とても共感した想いを抱く。互いに仕事も自分の目利きを足場とすることが多い。 

 (中略) 

 私は出版人としての國岡さんのファンなので、どーっと売れるとは思わないけど、

でも國岡さんの仕事にとても魅かれるなと、深く考えるものがあった。『ユング心理

学から見た結婚・離婚』(秋山さと子・増本敏子)という本だ。

 國岡さんは、もと『週刊新刊全点案内』という図書館向け情報誌の編集長で、

とくにエッセイ・コーナーの編集がばつぐんで、目を見開かせるものがあった。・・・

 その國岡さんが独立して『編書房』をつくったのだから、『うわー、すごいですね。』

とファンレターを送った。國岡さんは、『一人出版社なんですよ』と返事をくださった。

何かこの一言ですべてがわかるような気がした。」

 ながながと引用しましたが、編書房について書かれたものは、そんなにないので、

思わずこれは紹介しなくてはと思ったものです。

 編書房 國岡さんは、当方の友人の高校同級生となりまして、友人は熱心な応援

者で、新刊がでるたびに、当方も案内をもらって購入をすすめられました。

編書房がどのくらいのタイトルの本を出されたのかは承知しておりませんが、そこそこ

当方のところ架蔵されているはずです。

 編書房からは「独立自営の女たち」という本もあって、それはなによりも國岡さんの

ことに重なるようです。

 残念なことに編書房は、ながい休業に入っているのですが、今風の一人出版社とし

ては、ちょっと早過ぎたのでしょうか。