「図書」の新連載

 本日に外出から戻りましたら、岩波「図書」11月号が届いておりました。

 今月の表紙の人物はカストロでありました。写真ではなく、蝋人形となります。

それでも見たらすぐにカストロだなとわかるのですが、これは何歳くらいをモデル

としたのでありましょう。

 表紙には「追悼 大江健三郎さん」と刷り込まれていまして、前半には大江さん

についての追悼文が並びます。最後におかけたのは尾崎真理子さんのものですが、

これは19ページに及ぶもので、これは読み応えがありそうです。

 特集の真ん中くらいに田村久美子さんが「水曜日のレッスン」という文を寄稿し

ていて、大江、田村、レッスンというと、これは光さんの音楽の先生である田村

久美子さんのことでありますね。

 久美子さんは、このように書いています。

「白樺の歯の揺れる白いお玄関、そのドアを開けて、私は光さんと妹さんのピアノ

レッスンのため大江家にうかがっておりました。・・

 大江健三郎氏のご長男・光さん誕生のころ、私の夫・田村義也は、岩波書店

編集を担当しておりました。」

 ということで、田村久美子さんは編集者で、装丁家である田村義也夫人であり

ます。大江光さんの作曲された曲が録音されて、よく売れていた時に、その音楽

教師である田村久美子さんのことが紹介されておりましたので、光さんの関連で

田村久美子さんは有名でありました。

 今回の「図書」11月号は、表の特集は大江健三郎さんで、影の特集は田村義也

さんであるようです。目次をみましたら、田村久美子さんから四つ後ろの文章の

タイトルが「田村義也さんの誤解」となっています。

 この文章は、今月号から新たに連載が始まった「編集者になりたい」というも

ので、これの筆者は山田裕樹さんという、集英社の編集者であった人です。

 山田さんが駆け出し出版社社員であった頃、来る日も来る日も本の整理と発送

という力仕事ばかりで、編集作業に携わることができず、上司に直訴して担当さ

せてもらうことができた本の装丁の打ち合わせで田村義也さんに会うことになっ

たという話であります。

 集英社の本で田村義也さんの装丁本なんて、ほとんど印象はないぞと思ったら、

金石範さんのものと、飯尾憲士さんのものなどとのこと。そういえば飯尾憲士

さんのものは見覚えがあることです。

 こんな時に引っ張りだしてきてチェックするのが、「田村義也 編集現場115人

の回想」であります。2003年12月刊行のものですが、関わりのあった編集者が

寄稿しているのですが、このなかには残念ながら集英社の方のお名前はありま

せんでした。

 最後は山田さんの文章から引用です。

「こうして、休日午後二時ごろに九品仏の田村邸に何度も読んでくれた。・・

 私の装丁を中心とする質問に、丁寧に当該の本を開いて私に見せながら説明し

てくれた。昼だというのにウィスキーのロックを奥さんが運んでくださったので、

ぐびぐび飲んだ。」

 田村義也ファンには、とてもうれしい「図書」11月号でありました。