野暮用から戻って、絲山秋子さんの「末裔」を読み継ぐことにです。
いくらも残っていなかったので、すぐに読んでしまうはずでありましたが、途中で
うとうとしたこともあって、そこそこ時間がかかりました。うーむ、ちょっと苦戦
したことだな。
主人公が中年ということも影響していたろうか。読み終えてから巻末の斎藤美奈子
さんの解説に目を通しましたら、次のようにありました。
「本書の初出は2009年。この時点での五十八歳は1951年生まれ。いわゆる
団塊の世代の最後のほうに属します。高度経済成長期からバブル崩壊後の苦境の時代
まで、仕事一筋で駆け抜けてきた世代といえます。」
2023年にこの作品を初めて読んだ当方は、まるでそれに気がついていないので
ありますが、作中の主人公は1951年生まれということは、当方と同年生まれと
なるのですね。干支はうさぎですから、今年は歳男となりますか。
自分と同じ年生まれの男性の物語として読み直してみたあら、もうすこし違った
印象を受けるかもです。
読んでいて興味を覚えるのは、車好きの絲山さんが、主人公に車を運転させると
ころでありますね。
主人公は車を持っていないことから、息子から車を借りることになります。
「佐久に行くために車を借りる約束をした省三が、駅からぶらぶら歩いて行くと、
長身の息子がマンションの前で軽く手を挙げるのが見えた。その傍らには、小さな
黒い車が停まっていた。どこのメーカーだか思い出せない十字のマークに、なんだ
これは、と聞くとシボレーのMWだという。」
シボレーMWと記しても、ピンときませんが、この車はスズキがOEMで提供して
いたワゴンRのことですね。
ワゴンRではなくて、わざわざシボレーMWを登場させるのが、絲山さんであり
ますか。絲山さんは車好きでありまして、「スモールトーク」なんて本がありま
すからね。