借りて読むことに

 気になっている千葉雅也さんの「エレクトリック」を図書館から借りて読んで

見ることにです。最近出版された単行本ではなく、初出となる「新潮」2023年

2月号となります。

 「エレクトリック」を読んでみたいと思ったのは、一つは以前に記しており

ますように作中にウェスタン・エレクトリックのオーディオアンプが登場する

からであります。真空管のヴィンテージオーディオといえば、マランツとか

マッキントッシュというメーカーのことが頭に浮かんできますが、さらにそれ

よりも古い時代のものとなります。

 この小説の冒頭のところにウェスタンの紹介があるのですが、ウェスタンと

いえばのところを引用です。

ウェスタンはトーキーの技術革新にも貢献し、1930年代には、300Bと

いった真空管と共に劇場用のアンプとスピーカーが開発された。だから

ウェスタンの音でハリウッドの栄光は鳴り響いたのだった。その銘機が現在

でも、マニアの手から手へ渡りつづけているのである。」

 ウェスタンといえば真空管の300Bが代表的な存在で、いまもこの300B

という真空管は流通しているのですが、超絶マニアが探すのはウェスタンの

オリジナル品で未使用のものとなります。(その昔には、劇場でウェスタンの

システムが使われているところがあって、そうしたところではウェスタンの

300Bのオリジナルが大量にストックされていたと聞いたことがありました。

あれはNHKの話であったのかな。)

 真空管が小説のタイトルになったものとしては、柴田翔さんに「ロクタル管の

話」という作品があって、その昔のラジオ少年は、この作品を偏愛するのであり

ますね。これは文春文庫では「されどわれらが日々」と一緒にはいっているので

すが、「されど」はさっぱり読まれなくなっても、「ロクタル管」のほうは、そ

のテーマがマニアックなことから、根強く人気のはずです。

 この千葉さんの小説も、ページを開きますと半田ごてが登場し、はんだの匂い

が立ち上がってきますので、これはかってのラジオ少年におすすめのものとなり

ます。

 この小説に興味を惹かれる、もう一つは作者の千葉雅也さんが1978年生ま

れということで、当方の息子と同年であるからです。作中の家族と当方の家庭

とは似ているところがあるのかどうか、それと息子から見た父親はどう描かれて

いるのか、そこを見てみたいと思ったのです。

 息子からみた父親の小説というのは、もちろんたくさんあると思うのですが、

自分の子どもの世代は、その父親をどのように描くのかです。今のところ、成績

優秀で、一見素直そうに見える主人公は父親のことを敬しているように見えるの

ですが、まだ小説の半ばでありまして、最後までそうあってほしいと思うので

ありました。