まずは筋を追って

 本日は昨日に借りてきた辻原登さんの「隠し女小春」を、筋を追いながら読み

すすめることにです。

 ほんとにあちこちに仕掛けがいっぱいで、それがための伏線がたくさん用意され

ていますので、その仕掛けを楽しんでおりましたら、ぐいぐいと話に入いりこんで

いくことです。

 何よりも文章が読みやすいのでありますね。へんに気取ることもなしで頭に入る

かどうかは別にして、すーっと読めてしまうのが辻原さんの魅力であります。

帯には「長編サスペンス」とありますので、ストリーを紹介するのはよして、帯の

文章を紹介することにです。

ラブドールと暮らす男が、生身の女性と恋に落ちた。前途で男を待ち受ける危険

と陥穽とは・・」

 このようにあるのですから、登場人物には男がいて、生身の女性がいて、ラブ

ドールがでてくるのですよね。本のタイトルは「隠れ女小春」とありますので、

ラブドールが小春と呼ばれているということでいいのかな。

 それじゃ小春ってどこからかのネーミングなのかというのは伏線の一つでありま

して、これは作中ですぐに種明かしされるのですが、それが後々に意味をもつこと

にです。

 ほとんど書き出しのところで、あらっと思うのですが、そのあらっと思ったこと

が、後半になってのサスペンスにつながってくるのですね。

 当方は、この一行目にでてくる主人公の「矢野聡(やのあきら)」とあるのを

みて、「さとし」とか「あきら」というのは、当方の息子たちにかぶることもあり

まして、思わず彼らは大丈夫であるかと不安になりましたですよ。

 そのほか、登場する地下鉄銀座線田原町駅2番出入り口というのは、6月に東京

へと行った時のホテルへの通路であったり、この作中で紹介される「『ディープ

スロート』の温泉シリーズは、異色の構成と内容で根強い人気を博しているアダル

トビデオだが」とあるのは、どうやらこの書きっぷりからはあのシリーズのもの

であるようだとか、あれこれと辻原登さんのその方面の薀蓄を楽しんだりです。

 たかだか250ページくらいの中編によくもこんなに詰め込んだなと思うくらい

のてんこ盛りでありまして、こういうのは小説の楽しみでありますね。

 これはあたってみようかと思ったのは、次にくだり。

「彼は現在、新聞連載されている歴史小説のなかで、ヒトツバタゴの木が何度か

描写されているのが気になっているのだが、まだ見たことがない。・・・

 小説の主要な舞台は対馬で、作中ヒトツバタゴについては以下のように記述さ

れている。」

 ということで、歴史小説からの引用が続くのですが、これって対馬を舞台にし

た新聞連載の歴史小説って「韃靼の馬」のことなのかなです。この作品の刊行は

2011年ですから、ちょっと連載というと時代はあわないのだけど、「韃靼の

馬」にこの花がでてくるかどうかちょっと確認してみようです。