今週の野暮用は、本日まででありまして、明日からはお休みとなりです。
休みが続きますので、なにか小説を読めないかと先日に手にとってなげてある
谷崎の「卍」を、再び手にすることにです。
ほんとに小説を読むときには頭のところで、ペースをつかめるようになるま
で苦労することでありまして、先日に読んでいた「仮面の商人」も、最初のとこ
ろで行きつ戻りつをして、冒頭の数ページは何度か繰り返すことになってしまい
ました。
今回の「卍」もそうでありまして、大阪に暮らす結婚したての女性のひとり
語りですすんでいくのですが、この大阪弁の語りを楽しむことができなければ、
作品世界に入っていくことはできずです。
いま手にしている刊本には、山崎豊子さんの文章が掲載された月報が入って
いるのですが、そこには次のようにあります。
「谷崎先生の書かれた大阪弁は、実に不思議な大阪弁です。大阪弁そのものに
ついていうと、現実のそれとは違っているところもありますが、大阪弁の持つ
味、リズムの現わし方は、一つ一つの語句を間違いなく写し取っただけの大阪
弁より、ずっと大阪弁のニュアンスが出ています。」
山崎さんの文章が書かれたのは、1959(昭和34)年頃でありますの
で、それから60年以上が経過して、谷崎が書き残した大阪弁のニュアンスは
大阪の町中から失われてきているようであります。