読むだけで楽しい

 もうそろそろ読めない本や、書棚写真を映えさせる効果を目的とする本は

買わないようにしようと思っておりますが、絶版本について書かれた本などを

読むのは楽しいことです。

 昨日に図書館から「絶版文庫万華鏡」を借りてきたのでありますが、これは

ほとんど売れ筋ではなく、いまは新刊として入手ができなくなった文庫を、時

代ごとに紹介するものです。

 これに紹介されているもので、当方が持っているものはどのくらいあるだろ

うかと思って目次をながめるのですが、戦前編はまったく持っていなくて、戦後

も何冊かあるくらいであります。

 戦後のくくりでは、これはあとになったら入手が難しくなるだろうと思った

ものもあるのですが、読むことができないだろうなと思って買わなかったもの

はいくつかあることです。

 この本を書かれた近藤さんは1962年生まれとのことですから、このよう

な本の書き手としては、お若いことであります。(仕事は大学教員で専門は経

済学だそうです。)

 この本の「はじめに」のところのくだりから引用です。

「新刊文庫の書評を集めた坪内祐三の著作を除くと、文庫について書かれた本

の新刊は近年きわめて寂しい状況にあり、特に絶版文庫に関する著作はほぼす

べて『絶版文庫発掘ノート』刊行後から2000年代の初めまでに集中して刊行

され、そこで打ち止めになっている。」

 ということで、近藤さんは「絶版文庫の内容紹介」しているものとして、

「絶版文庫発掘ノート」以下の書名をあげているのですが、これは大半が青弓社

からのものでありまして、この「絶版文庫万華鏡」の版元も青弓社ですが、この

版元がなければ、「絶版文庫」というものに、こんなに注目が集まらなかった

かもしれません。

 近藤さんも「発掘ノート」(1983年)が登場したときの衝撃は忘れられな

いと記しています。そのときは近藤さんは二十歳でありますから、それから40

年でありますか。

 2000年頃までといえば、岡崎武志さんなど「SUMUS」同人の皆さんが古い

渋い文庫などについて、積極的に取り上げていた頃でありまして、ということは、

それに続く世代(近藤さんはいくらか年少)の人たちが、こうした絶版文庫に

ついての文章を書かなくなっているということですね。

 そんなあれこれのことを思いながら、「絶版文庫万華鏡」を手にすることであ

ります。