図書館から借りている本の半分は、今週後半に返却日をむかえることになり
です。そのまえに、すこしでも目を通すことはできないかと「新潮」10月号
を手にすることになりです。この「新潮」は乗代雄介さんの「皆のあらばしり」
が掲載されている号で、それを読むために借りたのですが、この小説を、もう
すこし読んで見たいと思うと、同時にほかにはどんなものが掲載されているの
かと、なかをパラパラとのぞくことにです。
当方よりも年長のお二人による「往復書簡 笑犬楼 VS 偽伯爵」という
タイトルでありまして、タイトルからもわかりますように筒井康隆さんと蓮實
重彦さんによるものです。
当方は筒井さんも蓮實さんもあまりなじみではないのでありますが、これは
どちらも食わず嫌いというか、おふたりのライバル(?)と目されるような人
のほうを当方がひいきにしていたからでありますね。
この往復書簡をのぞいていたら、そのあたりのことを蓮實さんが書いていま
したです。
「わたくしには、筒井さんの書かれたものからやや心が離れていた一時期があり
ました。ことによるとすでに見当をつけておいでかもしれませんが、それは
『文学部唯野教授』という作品への違和感にほかなりません。まず、山口昌男の
『中心=周縁』理論に対する心からの反感があり、その彼を中心とした『へるめ
す』という同人誌に掲載されたものに対する距離の意識がいくぶんか目を曇らせ
ていたのでしょうが・・・」
当方が最初に買って読んだ筒井さんの小説は「文学部唯野教授」でありまして、
それは「へるめす」に掲載になったものであったからでありますね。
前にも記しておりますが、当方は筒井さんよりは井上ひさしさんのひいきであり
まして、井上さんを読んでいたものですから、筒井さんには手が伸びなかったの
でありますね。
筒井さんがどういうわけか「へるめす」と近づいたことで、当方は読むように
なって、蓮實さんは「やや心が離れた」のだそうです。
それからずいぶんと時間が経過して、井上さんも山口さんも亡くなってしまい、
当方よりも年長の書き手の方が少なくなっているものですから、ついつい筒井
さんとか蓮實さんのものが気になるようになっていることです。