物価の優等生かな

 先日のネットでしたか、現在USAで活動をしている音楽家大江千里クドカン

の芝居には大江三千里という登場人物がいるそうな)さんが、日本の物価は安すぎ

ます。NYではちょっとした食事(そのときはラーメンかな)はすぐに二千円になり

ますと発言していて、働いている人のことを考えると安いということはいいことで

はないといってました。

 なるほど、この国はデフレで物の値段がずっと上がらなくて困っているのであり

ました。賃金が上がらないから、物価も上げられないということですか。

 物価の優等生といえば、もう何十年も値段がほぼ変わらないものをいうのであり

ました。その代表的なものは鶏卵でありまして、当方くらいの年齢の人間にしても、

その昔は卵は自分の家で鶏でも飼っていなければ、毎日は食することができない

ものでありました。子どもの頃の小学校図書室にあった道徳的な内容の教本には、

久しぶりに卵かけご飯を食べることが出来た子どもが、卵の汁をくちびるにつけ、

それを学校で自慢するという話がのっていました。それほどに卵は貴重であった

のですね。(もちろん終戦後の食料事情が悪いことも反映してです。)

 いまは、卵はひどく水っぽくて不味くなっているのですが、ひどいときには

目玉商品で百円を切る(10個入り)値段で販売されています。そんなの誰が

買うのかと思うのですが、その昔に玉子は貴重品という強烈な体験をしている

人たちは、これはありがたいと列をなすのでありますね。

 この鶏卵については、最近の贈収賄で話題となったように、ケージ飼いが

問題とされていて、そのケージ飼いと輸入飼料のおかげであの値段です。

しかし、それは昔に田舎で食べた鶏卵とは、まるで違った食材でありますね。

 もう一つ、昔はお祭りと運動会くらいしか食べることができなかったのに、

今は毎朝食卓にあがるというものにバナナがあります。これも当方の世代には、

えらく貴重でありまして、その昔には台湾からのものが主であったせいもあり、

国内流通の量も少なかったし、ハレの食べ物でした。

 いつから今のようになったのかなと思い、ずっと積ん読できた本を手にする

ことになりです。(読んでいなかったのといわれそうですが)

 名著のほまれ高い「バナナと日本人」です。ある意味ではフィリピンと日本人

というものかもしれません。

 台湾バナナとフィリピンバナナは、現在も店頭では価格差をつけられて販売さ

れていますが、フィリピンバナナの値段は安いものですと一袋200円ほどで

して、これは安すぎないかであります。

 「バナナと日本人」が刊行となったのは1982年でありますが、それからの

40年ほどたってバナナとフィリピンをめぐる状況は、すこしは良くなったので

ありましょうか。

 ずいぶんと思い切ったことをする大統領がフィリピンに誕生したので驚きまし

たが、彼のような人に期待を寄せたいという人びとがいることは理解できること

ですが、なかなか現実を変えるのはたいへんなことであります。