古典籍の世界か

 図書館から借りている「雪国を江戸で読む」をつまみ読みしておりましたら、

一番初めのところに次のような案内があります。

「本書で参照・紹介する江戸時代の文芸作品は、その多くがインターネット上で

デジタル画像の閲覧が可能です。・・本文中にはオンライン①等の省略記号で

示してあります。ぜひ本文を読みながら、手元にタブレットスマートフォン

置いて、当該資料にアクセスしていただければと思います。特に、『北越雪譜』

の初刷本(オンライン①)は早稲田大学図書館『古典籍総合データベース』にあ

りますので、ご参照ください。」

 もちろん、見に行ったとしてもほとんど眺めるだけで理解することはできない

のでありますが、便利なことでありまして、貴重な資料がこのような形で閲覧で

きるというのはありがたいことです。

 資料がここまで古ければ、この資料の公開によって、誰も不利益を被ることは

ないのでありましょう。

 「北越雪譜」といえば、そのむかしは岩波文庫が品切になっていて、随分と

文庫の古本では値段が高いものであったように思いますが、いまはまったくその

ようなことはなしです。

 それじゃ江戸時代の「北越雪譜」はどのくらいの値段であるのかと、日本の古

本屋で検索をしてみましたら、安いもので20万円台で高いものが50万円くらいの

ようです。江戸時代に「北越雪譜」はベストセラーとなったようですから、けっこ

う出回っていて、それで値段は安いのでしょうね。

 本日に購入した本では、古典籍について次のように説明していましたです。

「古典籍とは、明治時代以前の本で、活字本、木版本も多くあるが、日本の場合、

江戸時代以前の本は、その50パーセント以上が筆写本の形で伝わっている。

しかし、古いから価値があるかというと、そうではない文学的価値、歴史的価値

のある古典籍は、これらの中の30パーセントに満たないだろう。」

古典籍の世界を旅する (平凡社新書964)

古典籍の世界を旅する (平凡社新書964)

 

 江戸時代において大部数作成するのでしたら、版をおこして印刷ということに

なるのでしょうが、数冊作るというのでしたら、筆写しかないわけで、昔の人は

筆写するのは億劫ではなかったのですね。

 「雪国で江戸を読む」にでてくる鈴木牧之に関するエピソードであります。

鈴木牧之は、後に「北越雪譜」となるものの資料等をまとめて、これは出版して

くれそうな文化人に送りつけるのでありますが、なかなか日の目を見ることがな

いということで、江戸に送って、そのあとでは大阪にも送ったりですが、その都

度に筆写することになったとあります。

「(頼みの綱であった)芙蓉も没してしてしまい、京伝、玉山とあわせて三度も

用意した草稿がまたむなしく消えてしまった。」

 結局は奇跡のように出版されることになり、全部が無駄になったわけではない

のですが、このようにして何度も草稿を用意したことがわかります。

この用意された草稿がありましたら、これがたぶん一番価値ある古典籍となるの

でしょうが、このいずれかの草稿は、どこかに残っているのでしょうか。

「雪国を江戸で読む」には、そのことについて書かれているのかな。

雪国を江戸で読む 近世出版文化と『北越雪譜』

雪国を江戸で読む 近世出版文化と『北越雪譜』

  • 作者:森山 武
  • 発売日: 2020/06/26
  • メディア: 単行本