コラボ企画かな

 本日は、昨日に行きつけの本屋で購入しました恩蔵茂さんの河出文庫新刊を

読んでおりました。「『FMステーション』とエアチェックの80年代」という

ものですが、著者が身を置いた雑誌の世界において、後追いで創刊することに

なったFM雑誌の立ち上げと、それをとりまく業界の話になります。

 「FM雑誌」というのは、今ではすべてが姿を消してしまっているので、どの

ような内容であったかは、若い人たちには想像もつかないでしょうが、FM番組

をきくための番組表(というよりも、番組でかかる音楽のリスト)をあらかじ

め知ることができるというもので、この雑誌の番組で流す曲リストを頼りに、

FM放送を録音していたのです。

 当方もFM雑誌や新聞掲載のFM番組欄(いまよりもずっと大きかった)を参考

にカセットテープに、ジャズの生ライブなどを録音しておりました。

こういうきき方をしている人がクラシック、ジャズ、ポップスなどたくさんいま

したので、FM雑誌は成立したのであります。

 FM放送局の新規開局のことや、カセットテープとデッキ、そしてラジカセの

ことと、レコードからCDへの切り替えのことなど、当方にとっては同時代のこ

とでありますので、この本を見ることでそれがあった年のことを確認することが

できました。

 後発の独立系の放送局のスタンスや、ラジオ放送会社のたいへんさなどもとり

上げられていて、中学校の頃に音楽業界で仕事にありつくことはできないであろ

うかと思った当方は、やはりこれはいかんで正解であったなというような話題が

満載です。

 今はどうであるのかわかりませんが、けっこうブラックな話がのっていまして、

ここのところの「XレコードのSという女性シンガー」は誰のことなのかと想像

したりすることです。

 今は姿を消したFM雑誌というものは、今月まで放送されることが予定となっ

ている「カセットテープミュージック」という番組のなかに息づいているように

も思います。FM雑誌があったから「カセットテープミュージック」という番組が

生まれたと言いたい気持ちです。

 恩蔵茂さんは何年からダイヤモンド社にいらしたのかわかりませんが、なんとな

く、在籍した時期に坪内祐三さんの御父君が社長をしていたのではないでしょう

か。

 それはさて、この恩蔵さんの本をことを教えてくれたのは、新潮「波」の北村薫

さんでした。そう思っていましたら、この文庫のための後記に、次のようにありま

した。

「文庫化のきっかけをつくってくださった、私の最も敬愛する現代作家にして名探

偵、北村薫先生。また先生には、何十年も謎のままだった私の疑問に美しい答えを

与えていただきました。感謝の言葉もありません。」

 この謎解きというのは、新潮『波」の2021年8,9月号に掲載の「糸」と

いう小説のことでありまして、当方はそれを面白く読んで、この文庫にたどりつ

いたのですが、文庫の後記を読みますと、次はまた新潮「波」の小説を読みたく

なることであります。