新潮「波」に連載の北村薫さん「本の小説」は、8・9月と2回を使って「糸」
という作品を掲載です。
8月は北村さんが、「波」編集長と打ち合わせするシーンがあって、編集長は
大の小林信彦ファンであるということが書かれています。それから演芸の話から
沢田隆治さんの話となり、その昔は熱心にエアチェックをしていて、そのための
雑誌まであったということで、「FMステーション」が紹介され、この雑誌の編集
長であった方が書いた本のことになっていきます。
この本は面白いので、文庫になればいいのにと思っていたら、この9月に河出
より文庫になるのだそうです。当方も含めてまわりの音楽好きはエアチェックの
ためにこうした雑誌を購読していましたが、当方は「FMファン」を買っていて、
そのあとに「週刊FM」というのがでたのですが、「FMステーション」はほとんど
手にした記憶がありませんです。
当方の世代であれば、カセットに録音したエアチェックテープを持っていない
人はいないのではないかと思うのですよ。(ライブの音源などにはとっても貴重
なものがあって、それこそレアアイテムです。当方のコレクションには、いまを
ときめく松原みきさんが、NHKFMの特別ライブでやった「みきメドレー」という
のがありまして、これで歌っている「真夜中のドア」は、レコード化されたもの
とは違ったアレンジでありまして、松原みきさんの実力がよくわかるということ
で、当方のカセットコレクションのなかでは、一番にデジタル音源に変換しまし
た。あれはいつころに放送されたものだったか、メモされていないのが残念。)
ということで、「糸」という小説の8月掲載分は、かって「FMステーション」
の編集長であった恩蔵茂さんのことが紹介されて終わるのですが、9月号では
恩蔵さんから「ご教示いただければ」ということで、問い合わせのあった、その
昔に自分が読んだ小説は、いったいなんであったのかという「本の探偵」話へと
転じていくのでありました。
どのくらいの枚数の小説であるのかと思いながらですが、本当にたくさんの
話題を詰め込んで、それが糸のようにつながっていくということで、たいへん
面白く読むことができましたです。