その本の隣には

 昨日に図書館で「明朝体活字」があった棚のすぐとなりには、次の本が

ありましたです。

  先月にでた新刊ですが、書体をつくった人の回顧談などもあって、小宮山

さんの本にもつながることから、ありがたく借りることになりです。

小宮山さんの本は明朝体の活字に絞っての本でありますから、こちらよりも

「時代をひらく書体をつくる」のほうが親しみやすいようであります。

 こちらは本のタイトルに「書体設計士・橋本和夫に聞く」とありますことか

ら、書体設計士なんて言葉がない時代の職人さん(いまであればデザイナー

というのでしょうか)が、どのように修行して、どのような工夫をしたかとい

うことがわかりますし、活字から写植、そしてデジタルフォントへの変化など

も取り上げられています。

 ふだん何も思わずに印刷された文字を見ているのですが、そこにはえらい

苦労がこめられているのがわかります。

 本日読んだところで印象に残った橋本和夫さんの発言です。

この発言は、1963(昭和38)年ごろに橋本さんが描いた「硬筆がな」の原字

の制作に関してのものです。硬筆とありますように、この原字は教科書での

使用と考えてのものです。

「教科書体というのは、明朝体とは異なり、書き文字風です。明朝体の場合は

読むか見るだけですが、教科書体は、『読むことも見ることも、書くこともで

きる文字』でなければいけない。ノートに明朝体で書くことはふつうありま

せんが、教科書体には『書く』という要素が入らないと意味がない。

そういうことから考えると、教科書体の仮名というのは、はじめて手がける

仮名としてはなじみやすかった。」

 小学校に入る前から文字を読むことができる子どもは多くなっていますが、

義務教育で小学校に入った子どもたちが使う国語の教科書で使われる仮名を

「設計」するときに、書くこともできる文字というのが、他の字種の設計とは

違うところですね。小学生には硬筆習字というのがあって、それは鉛筆で書写

するのですが、そのときのお手本を作ったという話になりますか。

 このような方がいらしたというのは、この本で初めて知ることになりです。