昨日の朝日新聞書評欄を見ていましたら、須藤靖さんという宇宙物理学の
先生が「秋吉久美子 調書」を取り上げて、次のように書き出していました。
「私の世代にとって秋吉久美子の存在は別格だ。明らかに時代を数十年先んじ
ていた女優だろう。」
書き出しからえらく熱いことであります。
須藤靖さんは1958年お生まれとありますので、当方よりも学年で8つくらい
下になるのでしょうか。そして秋吉さんは1954年のお生まれで、樋口尚文さんは
1962年生まれ。
須藤さんが秋吉さんのことを別格といい、時代を先んじていたということは、
須藤さんは高校生になったばかりの頃に、秋吉さんが主演を演じた藤田敏八監督
三部作をリアルタイムでご覧になったのでありましょう。
藤田監督による三部作は、1974年公開作品で、この年は当方が学校を終えて就
職するという時期にあたります。三月までの作品は学生時代を過ごした地で見て、
それ以降は北海道で見たように思いますが、どこで見たかの記憶はあいまいです。
とはいっても、その時代の秋吉久美子さんの存在は、他の女優さんにはないも
のでしたね。やはり時代を体現した一人といえるでしょう。
このことをいち早く文章化したのは樋口尚文さんでありまして、1994年に刊行
の「女優の裸体」という単行本では、巻頭で一番多くのページを割かれて論じら
れているのが秋吉久美子さんでありました。(たぶん、今回の 調書の基礎に
なっているもののはずです。)
これを刊行したときの樋口さんは32歳ほどでありますので、ほとんど遅れてき
た青年でありますが、秋吉さんのその時代に与えたインパクトを教えてくれます。
同時代に秋吉さんがどのように受け止められたかということを記して、本当は
秋吉さんはこのように受け止められるべきであったのだということで、秋吉さん
を通して見える制作側の感覚のずれのようなものを教えてくれます。
これを読むと、なるほどなと思うのですが、今回の調書ではこれに加えて秋吉
さんご本人の証言もあるようで、秋吉さんを特別な存在と思っている人には、
見逃せないものとなっているようです。