買った本 2

 昨日のブックオフで購入した、もう一冊であります。

書道藝術 第18巻 本阿彌光?

書道藝術 第18巻 本阿彌光?

(書名と本の写真があっていませんでした。なんという表紙があらわれるのか。)
 これは何度か刊行されたシリーズなのでありましょう。当方が確保したのは1976年に
でた豪華普及版というものであります。この時代の中央公論社は、同じものを最初は
豪華なもので、次いでは簡易な装丁のものとして価格を抑えてだしてくれました。
今回の豪華普及版の定価は2500円とありますが、76年の2500円というのは、けっこう
なものでありました。
 昨日のブックオフでは「書道藝術」の端本が何冊かつまれていたのでありますが、
その一番上におかれていたのが「本阿彌光悦」の巻でありました。これには、帯がつい
ていまして、そこには「伝記 花田清輝」とあるではないですか。
これの値段は260円とありますので、「本阿彌光悦」の書が見られて、その上 花田清輝
さんの文章までついているのですから、これは買わないわけにはいかないと、中を見て
から購入を決めました。
 この本の伝記は、「鷹が峯拝領顛末」というタイトルになっています。
 光悦が徳川家康から「鷹が峯」の土地を拝領したということは、光悦の子孫の手にな
る「本阿彌行状記」のなかにしるされているのだそうです。
 これについて「花田清輝」さんのコメントであります。
「それは言葉の厳密な意味において、鷹が峯の拝領ではなく、鷹が峯への追放ではある
まいか。むろん、天下太平の江戸時代に生きていた光悦の子孫は、家康を『権現様』と
崇め、ついでに脇差しをといで差しあげたという、先祖の一人のかれに対するささやか
な奉仕を忘れずに、光悦に広大な土地をたまわった『権現様』の気前のよさを、心から
ありがたがっている。
 しかし、たえず盗賊の出没するような危険な土地への移住を強いられた光悦自身に
といっては、家康の贈り物は、むしろ有難迷惑だったのではなかろうか。にもかかわら
ず、光悦は、べつだん、ためらうこともなく、本阿弥一族や出入りの工人たちを引き連れ
て、鷹が峯へ乗りこみ、私財を投じて、あたらしい村をつくった。・・・
 京都が、古代的な政治都市から中世的な商業都市へ変わっていく過程において、風刺
好きのくせに、しっかりとしたところのなかった『京童』は、いつのまにか、筋金いり
のたくましい『町衆』に成長したが、わたしには、光悦がそんな転形期を身をもって生き
た、代表的な日本のルネッサンス人だったような気がしてならないのだ。」
 いかにも、花田清輝さんらしい文章ではないですか。「日本のルネッサンス人」なんと
いういいまわしさえでてきて。
 となると、この文章は「日本のルネッサンス人」に収録されているのかな。
ということで、「日本のルネッサンス人」を引っぱりだしてきました。

 そういえば、先日に「室町小説集」から「吉野葛」を話題としたことがありましたが、
ほぼ同じ時期に刊行されたエッセイ集であります。
これの目次をみましたら、「本阿弥系図」という文章がありました。書き出しをみますと
鷹が峯拝領顛末」とは違うのですが、花田さんが光悦について、そんなにたびたび書いて
いるとは思えませんので、先をみていきましたら、これは「鷹が峯拝領顛末」に加筆した
ものであることがわかりました。