昨日に引き続いて「小尾俊人日誌」を手にしています。みすず書房の大黒柱
である小尾さんが大学ノート150冊につけていた日録から、丸山真男と藤田
省三という二人にかかわるメモ(1965年1月から1985年12月まで)を抜いた
ものとなりです。
65年から89年といえば、現在よりもずっとアカデミズムとかインテリが重ん
じられていたことになります。藤田省三さんは比較的早くに大学教員をやめて
それからは大学の教員職にはつくことがなかったのですが、ちょうどその頃が
この期間であります。
丸山真男さんといえば、なく子もだまる東大法学部のスター教授でありまし
て、綺羅星のごとくの門下生がいたわけであります。当然のこと、丸山さんの
著作などは、かなりの売れ行きが期待されるので出版社で取り合いとなった
はずですが、著作は多くなく、生前に「みすず」から刊行したのは「戦中と戦後
の間」一冊だけとなります。
今回の「日誌」をみますと、丸山さん、藤田さんともにあまり他言できないよ
うな性格の話を小尾さんにしていることがわかります。丸山さんについては、
建前では岩波と付き合って、本音(弱いところ)では小尾さんに頼る部分が
あったのではと思えてしまいます。
同様のことは藤田省三さんについても言えるようでありまして、丸山さんの
学問にも、藤田省三さんの思想にも、まるで歯が立たない当方でありますが、
両者の人間としての辛さ(?)のようなことは、すこしわかるような気がいたし
ます。
その昔のアカデミズムに君臨した大先生の著作をまとめるときには、担当
編集者はたいへんであったようなことがいわれていますが、みすずの叩き上げ
編集者 小尾さんにはまた別の役回りがあったようであります。