松山巌さんの書評集が西田書店からでて、それを見ていましたら、西田書店から、
さらに松山さんが参加した「本の話 鼎談書評」が刊行されたことを知りました。
文藝春秋社「本の話」であれば、定期で講読していたと、バックナンバーを何冊
か取り出してきたのですが、連載されていた「鼎談書評」については、ほとんど
記憶は残っておりませんでした。
「本の話」は、けっこう興味深いものがたくさんあって、そっちに眼を奪われて
いたのでありましょう。
それで改めて「鼎談書評」のいくつかを見ることになりです。
鼎談するのは井上ひさしさん、井田真木子さん、松山巌さんの三人で、その回ご
とにうちの一人が三冊の本を用意して、それについて話をしていくことになります。
手もとにあって松山さんが用意した三冊です。
六回目(1995年12月号)となりますが、ここでは「道を極める人たち」ということ
で、次の三冊があがっています。
- 作者: 古川緑波
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/08
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- 作者: 矢野誠一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1995/08
- メディア: 単行本
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- 作者: 佐藤清彦
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 1995/08
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この三冊の鼎談で、うまくかみ合っていて面白いと思ったのは、矢野誠一さんの
芸人について書いた本を語り合ったもの。
松山さんは、芸人の話が好きでよく読むが、この本は酒と博奕と芸といったものに
賭けた人たちの面白さが描かれていますと切り出しますと、これを井上さんが「時間
をかけて書かれていますね。」と受けます。
井上さんは、若い頃に「てんぷくトリオ」のコントを五百本近くも書いていますし、
浅草の「フランス座」で働いていたのですから、この芸人の世界は熟知しています。
となると、井田さんは、どのような視点でからんでくるかでありますね。そう思っ
ていましたら、次のように発言です。
「私が生まれた家のすぐ近くに、芸人さんたちだけのアパートがありまして、うちだ
け商売じゃなかったものですから、他のうちのお父さんは皆夜働きに行くのに、なぜ
うちだけ昼間働きに行くんだろうって思っていたんですが、それで芸人さんの日常生
活を間近でみて育ったんですが、芸人さんってほとんど笑いませんね。」
芸人さんたちだけのアパートといえば、なんとなく下町にあるちょっと古い木造の
建物を思い浮かべてしまいます。芸人さんたちは売れっ子になったら、もっといいと
ころに引っ越ししたいと思っているのかな。
井田さんが、すぐ近くにといっているのですから、彼女もそのような風景のなかで
暮らしていたということですね。
この井田さんの発言に、井上さんがすぐに反応して返します。
「喜劇俳優が舞台から下りたとき真面目でないと、舞台と普段の自分の差が分からな
いから」、普段の芸人さんは、あまり笑わないのが大切と言うのでした。
この鼎談の最年長と年少のお二人が亡くなって、松山さんが残っているのですが、
松山さんが健在のおかげで、鼎談してから20年も経過して、本となることになりです。
- 作者: 井上ひさし,松山巖,井田真木子
- 出版社/メーカー: 西田書店
- 発売日: 2018/04/01
- メディア: 単行本
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