やっと下巻に

 ほとんど一月一冊のペースでトーマス・マン「ブッデンブローク家の人々」は進行
中であります。やっとこさで、本日から下巻にはいりました。
 1800年代ドイツの裕福な家族の物語です。どのくらいのお金持ちであるのかな。
本日に読んでいたところに、次のくだりがありです。
「ピュール氏は、肱掛け椅子から腰を浮かし、うつむき、ゲルダがさし出す手を、う
やうやしく捉え、そのあいだも、左手で第五音を、はっきりと、くっきりと鳴らし、
ゲルダもさっそくストラディヴァーリを取り、弦の調子を、確かな音感ですばやく
ピアノの音に合わせた。」
 ピュール氏は、教会のオルガン奏者で、音楽の教師のような存在。
ゲルダはブッデンブローク家の現在の当主 夫人。お金持ちの一族から嫁いできたの
ですが、バイオリニストで結婚前から「ストラディヴァーリ」を所有し、それで演奏
活動をしていたとあります。
 これを読みますと1860年頃には、「ストラディヴァーリ」というバイオリンは名器
の評価が定まっていたことがうかがえます。ゲルダ夫人が、この楽器を使って、どの
ような演奏活動をされていたのかはわかりませんが、現在ではいくらお金を積んでも
入手が難しそうな楽器、この時代はどのような価格で取引がされていたのでありま
しょう。
 なんとなくかっては王侯貴族の元にあったように思える楽器ですが、1800年代半ば
となって、ブルジョワジーの勃興してきて、楽器の所有者が変化してきたものなので
しょうね。
 ゲルダ夫人の育った家庭が、「ストラディヴァーリ」を娘に与えるだけの資金力が
あったということですね。