気になる新刊など

 先日の新聞を見ていたら文芸時評という磯崎憲一郎さんコラムに「現実の一部を切り
取って、人々が共感できるように描いてみせるのが小説ではない。語りの力によって
読む者を圧倒しつつ魅了する、現実とは異なる、いわば小説的現実を立ち上げてみせる
のが、小説という芸術表現なのだ。」というくだりがありました。
作者がダイレクトに投影されているような小説ではなく、できるだけ私から遠いところ
で話は進んでほしいものです。
 磯崎さんは、上の文章に続いて「恐らくその最良の証明となるであろう」作品として
次のものをあげています。

『スタア誕生』

『スタア誕生』

 金井美恵子さんの新作です。読めても読めなくても購入してしまうのが、金井さんの
新作でありまして、今回の作品はどういうものでありましょう。延々と続く会話とあり
ますので、涎のようなだらだら小説でしょうか。
 これは市内の本屋には入荷するでしょうかね。入るとすればそろそろでしょうから、
探しにいってみよう。
 あと気になるのは、最近熱心に後藤明生さんの新刊をだしているつかだま書房のもの
であります。
 そういえば、今月の「みすずアンケート」では、坪内祐三さんがつかだま書房のから
でた後藤明生さんの本を取り上げていました。
「つかだま書房から刊行された二冊の後藤明生本(対談篇と座談篇)、これは今年の文
学史的事件だと思うのですが、文芸誌にまったく書評が載らなかったのはどういうこと
でしょう(今や文芸誌から文学はまったく消えてしまったのです。)
 特に重要なのは座談篇です。」
 たまたま図書館にはいっていて、これは借りてどのような内容となっているか確認す
ることはできたのですが、とっても目を通すまではいっておりませんでした。あの本は
文学史的事件か。もう一回借りなくてはいけないこと。
 昨年は国書刊行会からコレクションが刊行された後藤明生さんですが、それと並行し
て、入手が難しかった作品が装い新たにつかだま書房からでています。
これは、どう考えても大きな書店へといかなくては手にすることはできないようです。
壁の中【新装普及版】

壁の中【新装普及版】

 さらにさらに、つかだま書房が発した情報(2月21日のツイッター)には、次のように
ありです。
 「4月に後藤明生『引揚小説三部作』を刊行します。自身の引揚体験をモチーフにした
『夢かたり』『行き帰り』『嘘のような日常』の三作品を収録。「後藤明生コレクション」
では短編として掲載された連作小説も完全版で読むことができます。巻末解説は文筆家で
ゲーム作家の山本貴光さん! 乞うご期待!」
 後藤明生さんが亡くなったのは1999年8月ですが、こんな時代がくるとはね。